インドネシアの地下鉄開業とリモートワークが定着した理由

インドネシアといえば、ジャカルタの大渋滞を思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。
今回プルーヴ社では、4月の第2週~3週にかけてインドネシアに視察に行ってきました。ちょうど3月下旬に地下鉄が開通したので、地下鉄の様子を見てそこから感じた変わりつつあるビジネスとライフスタイルについてお伝えします。

意外にも利用者が少ないジャカルタの地下鉄

2019年3月24日、インドネシアに初めての地下鉄が開業しました。場所は、ジャカルタを13の駅で結ぶ都市高速鉄道(MRT)南北線です。
車では2時間かかるところを地下鉄では30分弱で移動できるので、渋滞に悩まされているインドネシアの人々にとって、待望の地下鉄のはずです。

 
私たちがインドネシアに滞在したのは、開通から2週間ほど経った時期でしたが、驚いたのは地下鉄乗車率です。
あの渋滞を巻き起こしている人口密集地に、1時間6本運行する地下鉄ができたというのに、車内には座れるほどの乗客しかいなかったのです。

ジャカルタの地下鉄 改札風景

今まで移動手段は車かバイクだったインドネシアの人々。自動改札に不慣れな人が多いので、改札機近くには、正しく使えるように案内役の人が立っていました。

ジャカルタの地下鉄 乗車カード
ジャカルタの地下鉄 乗車カード購入窓口

左側:乗車カード(切符)です。Suicaでお馴染みのソニー製「FeliCa」 のICカードが採用されました。
右側:乗車カードを購入できる窓口です。発券機もありますが、窓口で購入する人もたくさんいました。

 
新しく作られた駅はとてもできれいで、ゴミが目立つこともなく乗車マナーも守られていました。そのうえICカードでタッチして改札を出入りできるなど、設備も整えられています。
もしかしたら日本人にとっては使い慣れている地下鉄も、ジャカルタの人たちにはまだ使いづらいのかもしれません。とはいえ、早く・安く・安全に移動できるにも関わらず、座れる程度しか利用者がいないことに驚きました

 
今後、ジャカルタの人たちが地下鉄の便利さに気づいたときに、どのようにライフスタイルが変わっていくのか、インドネシアのビジネスがどう変化していくのかが楽しみでもあります。

IT業界を中心に進むリモートワーク

一方、改善されない大渋滞を背景に、ジャカルタではリモートワークのニーズが高まっていました。
オフィスを拡張する必要がなく、渋滞で遅刻されることもないリモートワークは、企業側にとっても経済的なメリットがあります。また労働者にとっても、渋滞に耐えながら通勤する必要がないので魅力的な働き方です。
このように企業と労働者の両者からリモートワークのニーズが高まり、特にIT業界を中心に、ジャカルタでは自宅やコワーキングスペースで仕事をする働き方が定着していました。

 
そこで私たちは、「GoWork」や「WeWork」などのコワーキングスペースに実際に行って見てきました。

ジャカルタ コワーキングスペース「GO WORK」

ジャカルタで一番有名なコワーキングスペース「GO WORK」。とてもおしゃれな雰囲気です。

 
ジャカルタでヒアリングしたところ、コワーキングスペースで働く人は「おしゃれな人」と捉えられていました。Go Workのようなおしゃれな空間で、ファンシーな椅子に腰掛けながら働く姿は、憧れのようです。

ジャカルタ コワーキング GO WORK

Go Work

コワーキング WeWork

WeWork

働く側は渋滞ストレスがない上に自尊心が高められ、企業側には経済的メリットがあるリモートワークは、交通渋滞を背景に日本よりも進んでいました。

インドネシアで事業をするなら今がチャンスか

ジャカルタのコワーキングスペース事情を説明しましたが、実はジャカルタでは、地下鉄開通後も駅周辺のオフィスビル賃料は、値上がりしていませんでした

 
新しくできた地下鉄の駅は、既に栄えている街をつないで作られたため、元々の賃料が高いエリアだったことも、賃料上昇が見られなかった要因の一つだと考えられます。

 
しかし一番大きな要因は、やはりジャカルタの人たちが「地下鉄のある街」を経験したことがないからと言えるでしょう。今後地下鉄の価値に気付いた時に、オフィス街の賃料に上昇傾向が表れるかもしれません。
何より栄えているエリアを路線で繋ぎ、その路線は今後も広がっていきますから、都市としての規模や成熟度は上がっていくはずです。

 
またインドネシアは、リーマンショック後に最も経済の立ち上がりが早かった国と言われています。経済復活が早かっただけに、ビルなどを建て続け、現在は空室が増えている状況です。そのためオフィスを構える場合は、環境や設備の良いオフィス物件であっても、賃料交渉がしやすいというメリットもあります。

 
地下鉄ができて便利になったにも関わらず、今までと変わらない金額でオフィスを構えられるのですから、今がチャンスと言えます。リモートワークも定着しているので、現地スタッフを雇う場合も小さなオフィスから事業をスタートできます。

 
これから地下鉄通勤が習慣化すると、インドネシアのライフスタイルも変わっていくでしょう。その時に市場にどんな変化が起こるのか、プルーヴ社では視察を重ねていく中でわかっていることも多くあるかと思っています。
もしインドネシアでの事業展開に興味があるのであれば、最新の情報を提供できますのでぜひご相談ください。

出典:「インドネシア初となる地下鉄開通:ジャカルタ都市高速鉄道(MRT南北線)開業式典」
https://www.jica.go.jp/press/2018/20190325_01.html

インドネシア版「Suica」はQR決済に勝てるか
https://toyokeizai.net/articles/-/285426

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