リライアンスとは、石油会社の別名ではなく、精製化学・通信・小売を一つの連結に載せたインドの複合企業です。正式にはリライアンス・インダストリーズ(RIL)といい、NSEに上場しています。FY2025–26(2026年3月期)の連結売上は約11.76兆ルピー(約1,240億ドル)規模で、売上で最大なのは今も石油化学(O2C)ですが、利益と成長を引っ張るのは通信のJioと小売です。本記事では、セグメントごとの数字、2016年以降の事業転換、プロモーター持分と財務、日本企業との関わりまでをわかりやすく解説します。
当コラムで注目する用語
- RIL:リライアンス・インダストリーズ。NSE上場の持ち株兼事業会社。
- O2C:Oil to Chemicals。原油から燃料・石化までの統合セグメント。
- Jio / Digital Services:通信とデジタルサービスの柱。Jio Platformsが中核。
- Reliance Retail:小売・消費の柱。店頭とJioMart等のデジタル。
- プロモーター:SEBI開示上の支配側。RILではアンバニ一族と持株法人。
- サムライローン:非日本企業が円建てで借りるシンジケートローン。
リライアンスとは何の会社か
RILはインド民間で最大級の複合企業です。石油化学を中心にしながら、通信と小売で消費者との関わりを広げてきました。
FY2026の公式統合報告によると、連結売上は前年比+9.8%、EBITDAは+13.4%、当期利益は+17.8%で伸びました。
セグメント別に見ると、売上ではO2C(石油化学)の₹6,62,401 croreが最大です。一方、利益ではJio Platforms(JPL)のEBITDAが₹76,255 crore前後と大きく、Retailは売上総額₹3,70,026 croreに対してEBITDAが₹27,033 croreでした。
「石油の会社」とだけ言ってしまうと、いまの事業の広がりや投資の方向を読み違えます。例えば同じ好決算でも、売上の大きい事業と、利益への寄与が大きい事業は別です。まず、この二つを分けて読むことが出発点になります。
| FY2026(2026年3月期) | 規模の目安(公式) |
|---|---|
| 連結売上 | ₹11,75,919 crore(+9.8%/約US$1240億) |
| 連結EBITDA | ₹2,07,911 crore(+13.4%) |
| 当期利益(PAT) | ₹95,754 crore(+17.8%) |
| O2C売上 | ₹6,62,401 crore(+5.7%) |
| Digital(Jio Platforms単体)売上 | ₹1,46,885 crore(+14.6%) |
| Retail総売上 | ₹3,70,026 crore(約+12%) |
| 設備投資(Capex) | ₹1,44,271 crore |
| 純有利子負債 | ₹1,24,717 crore(2026-03-31) |
三つの事業セグメントを分けて読む
RILの中身は、大きく三つに分かれます。石油化学のO2C、通信・デジタルのJio、そして小売のリライアンス・リテールです。順番に数字を見ていきます。
O2C(石油化学、いまも売上で最大)
O2C(Oil to Chemicals)は、ジャムナガルを中心とする精製・石油化学の統合事業です。FY2026の売上は₹6,62,401 crore(+5.7%)、セグメントEBITDAは約₹60,546 crore(アナリスト向け資料の整理)でした。
原油とガソリンなど製品の価格差(いわゆるクラックスプレッド)が利益を押し上げる一方、下流の化学品の採算や地政学リスクも、会社の説明に書かれています。連結の輸出は₹2,78,808 croreと報告されています。
日本企業から見ると、原油・石油製品・石化原料の調達や、設備・触媒・エンジニアリングの商談につながりやすい場面があります。「リライアンス=Jio」とだけ見ると、売上で最大のO2C側を見落としやすくなります。
燃料と石化の採算が同時に動く年は、O2CのEBITDAが連結全体を大きく左右します。逆に、消費者向け事業が伸びても、四半期の連結は原油価格と価格差で揺れます。この二つを分けて考えないと、「通信事業は好調なのに、連結でなぜか弱いのでは」という読み違いを起こしやすくなります。
Jioとデジタルの利益貢献
Jio Platforms(JPL、Digital Servicesの中核会社)のFY2026売上は₹1,46,885 crore(+14.6%)です。EBITDAは約₹76,255 crore(+18.8%)と大きく、連結EBITDAのなかでも目立つ柱です。
なお、RILの事業セグメント開示では、「Digital Services」区分の売上を₹1,76,164 crore(+14.3%)、EBITDAを₹76,560 crore(+17.8%)と別に示しています。これはJPL単体と連結の範囲が違うためです。資料によって数字が変わる点は、社内で共有するときに注記しておくと誤解を防げます。
統合報告によると、2026年3月時点でJioのデジタル加入者は5億2,400万超です。5G利用の拡大、ARPU(加入者あたり売上)の改善、ブロードバンドが成長の説明に並びます。
Jioが商用サービスを始めたのは2016年9月5日です。無料期間付きの歓迎オファーで、通信市場の価格競争を一変させました。転換の起点は「通信を始めた」ことよりも、「データ課金の業界ルールを書き換えた」ことにあります。いまの数字は、その後の加入者規模とサービスの束ね方が積み上がった結果です。
リライアンス・リテール
リライアンス・リテールのFY2026総売上は₹3,70,026 crore(約+12%)、EBITDAは₹27,033 crore(約+8%)です。登録顧客は3億8,700万人(+11%)、取引件数は19.3億件(+39%)と会社が説明しています。
公式が強調するのは、ハイパーローカル配送やファッション分野の伸ばし方です。
O2Cが法人向けの中心、Jioが回線とアプリ、リテールが店頭と即日配送を担います。三つの数字を並べると、「複合企業」という言葉の中身が具体的に見えてきます。
小売だけを切り取ると、利益率は通信より低く見えます。ただ、消費者と広く関わって規模を取る事業だと捉えると、その位置づけがはっきりします。
2016年以降の事業転換
時系列で見た転換点は、2016年9月のJio商用開始です。それ以前のRILは、繊維から石油化学・精製へ広げてきたエネルギー化学の会社として知られていました。
Jio以降は、通信と小売の売上が連結の姿を変えました。FY2026でも、デジタルと小売の二桁成長が説明の中心です。公式も、デジタル・小売・メディアが二桁成長で連結売上を押し上げたと書いています。
流れを単純化すると、規制と価格破壊で加入者を集め、その回線の上に小売・メディア・AIを重ねていく、という順序です。
会社は将来に向けて、新エネルギーやAIインフラも公表しています。例えば2025年10月のGoogleとの連携、2026年6月のMeta向けデータセンター計画です。日本企業から見れば、転換は終わった話ではなく、投資の行き先がO2Cと新領域に並んでいく話として読めます。
プロモーター持分の構造
リライアンスを見るときは、事業の数字と並べて、資本の形も押さえます。支配の形は、タタのような信託による持ち株とは違います。
RILの公式持株パターンでは、プロモーターとグループの持分は2026年3月31日時点で50.00%(46先、66億4,549万6,096株)、2026年6月30日時点で50.48%(47先、67億1,549万6,096株)です。
個人名義の持分は小さく、未上場の持株法人にまとまっています。FY2025–26中、プロモーター側は公開買付規則に基づいて担保設定なしと届け出た、という整理が前稿でも一次確認されています。
日本企業が相手を確認するときは、事業会社の役員と、プロモーター側の持株法人を別の行に分けて書くと整理できます。持分が半分前後でも、プロモーターという肩書と開示義務は残ります。
負債と設備投資の規模
2026年3月31日時点の総有利子負債は₹3,74,421 crore、純有利子負債は₹1,24,717 croreでした。FY2026の設備投資は₹1,44,271 croreです。
公式は、これらをキャッシュプロフィットで賄い、主にO2Cと新エネルギー、デジタル・小売の成長投資に充てたと説明します。アナリスト資料は、純負債/EBITDAが1倍を大きく下回る水準を強調しています。
投資の読み方は二通りです。一つは、既存のO2CとJio・小売を維持・拡張する投資。もう一つは、電池・再エネ・AI計算基盤といった次の成長分野への投資です。
負債の絶対額だけを見て過度に恐れる必要はありません。EBITDAとCapexの対応を一つの表に並べると、実務では判断しやすくなります。
日本企業との関わり
公表されている日本側の関わりとして、RILはFY2026に円建てサムライローンJPY 919億(約6.25億ドル相当)を組成しました。年次報告は、インド企業として過去最大規模、アジア企業としても大型と記しています。参加したのは日系・台湾系など10行で、満期を迎える円建て債務の借り換えが目的です。
あわせて、日本の輸出信用(NEXI)を背景にした約6億ドル相当のアンタイド融資を、太陽光・電池ギガファクトリー向けに確保した、という説明が会社と報道にあります。
商社・化学・装置メーカーから見ると、ジャムナガル系の石化の流れと、新エネルギーの機材・部材が商談の候補になります。
通信のソフトバンクによるJio出資は、2019年頃に検討報道がありましたが、成立した出資契約としては扱いません。引用してよいのは、公式が書いた資金調達と、一次で確認できる設備・エネルギー案件までにとどめると安全です。
提案の前に、自社の話が「円建てファイナンスの相談」なのか「装置・材料の供給」なのか「小売・通信のサービス連携」なのかを、一文で決めておきます。同じリライアンスでも、相手部署によって話が進む速さは変わります。
よくある誤解(通信会社だと思う)
よくある誤解は、リライアンス=通信キャリアと一言で片づけることです。FY2026でもO2Cの売上はデジタルより大きく、純負債とCapexの議論もエネルギーや新領域を含みます。
逆の誤解は、いまも「ただの石油会社」と思い込み、Jioの5億超の加入者と小売3.8億超の顧客を見落とすことです。
正しく読むなら、連結の三本柱(O2C/Digital/Retail)を同じ表に載せ、プロモーター持分と純負債を脚注に添えます。タタとの対比は、信託か一族の持株か、という支配の型の違いであって、業種の広さを比べる話ではありません。
確認しておきたいこと
五点を押さえておくと安心です。
(1) 相手がO2C/Jio/Retail/新エネルギーのどれかを、まず固定します。
(2) 使う数字が連結かセグメントか、総売上か純売上かを注記します。
(3) 持株表の日付が3月末か6月末かを、契約メモに書き添えます。
(4) 日本側の関わりが融資・部材・石化・再エネのどれに当たるかを分けます。
(5) ソフトバンク出資の検討などの未成立案件を、確定案件と並べません。
リライアンスとは何かを一文で言うなら、「精製化学を中心に、通信と小売という消費者向け事業を載せたインドの複合企業」です。
読み解きのポイント ①連結₹11.76兆ルピー/EBITDA₹2.08兆 ②O2C売上₹6.62兆・Digital₹1.47兆・Retail総₹3.70兆 ③Jio加入5.24億・Retail顧客3.87億 ④プロモーター約50% ⑤サムライJPY919億+NEXI系グリーン資金
リライアンスは、一つの業種だけで語り切れる会社ではありません。セグメントごとに数字を分けた資料があってこそ、次の商談で相手部署に話が通ります。
よくある質問
Q. リライアンスは何の会社ですか?
上場会社RILを中核とする複合企業です。石油化学(O2C)、通信デジタル(Jio)、小売が主要な柱で、FY2026連結売上は約11.76兆ルピーです。
Q. いちばん大きい事業はどれですか?
売上ではO2Cが最大級です。利益貢献ではDigital ServicesのEBITDAが大きく、成長率ではデジタルと小売が二桁です。
Q. 創業家の持分はどれくらいですか?
公式持株表では、プロモーターとグループが2026年3月末50.00%、同年6月末50.48%です。個人名義は小さく、持株法人に塊があります。
Q. 日本企業との関わりはありますか?
FY2026に円建てサムライローン(JPY919億)やNEXI関連のグリーン資金が公表されています。通信の未成立出資検討は確定案件と分けて扱います。
主な出典
RIL Integrated Annual Report 2025-26(連結売上₹11,75,919 Cr・EBITDA₹2,07,911 Cr・PAT₹95,754 Cr・輸出₹2,78,808 Cr・Gross debt₹3,74,421 Cr・Net debt₹1,24,717 Cr・Capex₹1,44,271 Cr・Jio加入524 Mn+・サムライローンJPY91.9 Bn)/RIL FY2025-26 Analyst Meeting(O2C売上₹6,62,401 Cr・Digital=JPL単体売上₹1,46,885 Cr・EBITDA₹76,255 Cr・Retail=RRVL単体総売上₹3,70,026 Cr・セグメントEBITDA)/RIL Integrated Annual Report 2025-26 セグメント注記(参考:Digital Servicesセグメント売上₹1,76,164 Cr・EBITDA₹76,560 Cr、Retailセグメント売上₹3,71,085 Cr・EBITDA₹27,034 Cr。JPL/RRVL単体数値とは連結範囲差あり)/Reliance Retail FY26説明(EBITDA₹27,033 Cr・顧客387 Mn)/Jio 2016-09-01プレス(2016-09-05商用・Welcome Offer)/RIL Shareholding Pattern 2026-03-31/2026-06-30(プロモーター50.00%→50.48%)/RIL公式「Financial Performance & Review」(サムライローン・日台10行)/NEXI関連グリーン融資の会社・報道整理/調査時点:2026年8月11日。
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※2026年8月時点の情報をもとに作成しています。監修:森英朗(グループ代表)。
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