
インドは高い経済成長率を維持していることから、海外進出先として注目されている地域の一つです。そのインドではデジタル化が急速に進み、他の地域と同様にEC市場が拡大しています。そのような中で、存在感を示しているのがECマーケットプレイスのフリップカート(Flipkart)です。本記事では、フリップカートの概要や成長した背景について解説します。
フリップカートとは?インドで人気のECマーケットプレイス

出典:フリップカート
フリップカートは、インド・カルナータカ州バンガロールに本社を置く、インド最大規模のECマーケットプレイスです。140万以上の出品者が1億5,000万点以上の商品を出品し、5億人以上の顧客が利用しています。
ECマーケットプレイスとは、出品者が商品を登録し、顧客がオンライン上で商品を購入できるプラットフォームのことです。日本では、楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazonなどが代表例です。
フリップカートの2023年時点の企業価値はおよそ約350億ドルとされており、現在はアメリカの大手小売企業ウォルマートの傘下にあります。
歴史
フリップカートは、サチン・バンサル氏とビニー・バンサル氏によって設立されました。両氏は同姓ですが、血縁関係はありません。創業前、二人はともにAmazon.comで勤務しており、その経験を活かして2007年にオンライン書店としてフリップカートを立ち上げました。
その後、2011年にオンラインプラットフォームの「Mime360.com」や映画ポータルサイト「Chakpak.com」を買収し事業を拡大。その後も拡大路線を続け、2014年には大型セールで約3億ドルの売上を記録するなど、インド国内のEC市場における主要プレイヤーへと成長を遂げます。
こうした成長を背景に、2018年にはアメリカの小売大手ウォルマートがインド市場の成長性に着目し、約160億ドルでフリップカートの株式77%を取得しました。
ウォルマートの詳細は、「ウォルマートとは?世界最大の小売企業の現状や事業戦略を解説」の記事をご参照ください。
フリップカートの主な特徴
フリップカートは、顧客から支持を得るために様々な仕組みを整備しています。ここでは、主な4つの特徴を紹介します。
・豊富な品揃え
フリップカートの特徴は、80以上のカテゴリにわたり、1億5,000万点を超える商品が登録されていることです。取扱商品は家電・ファッション・日用品・食品・書籍に加えて、自動車やバイクといった大型商品など多種多様です。このような豊富な品揃えがあることで、ユーザーは一つのプラットフォーム上でほとんどの買い物を完結できます。結果、利便性の高いショッピング体験につながり、顧客満足度の向上にも役立っています。
・強力な物流・配送ネットワークの構築
フリップカートは、子会社に物流企業「Ekart」を運営しており、インド全土をカバーする配送ネットワークを構築しています。このネットワークにより、都市部だけでなく地方都市や農村部にも迅速で安定した配送を実現しています。
・最短10分程度で届くクイックコマース対応
フリップカートは、一部の地域で「クイックコマース」と呼ばれるサービスにも力を入れています。これは、商品を最短数分で届けるサービスです。「ダークストア」と呼ばれる専用拠点を各地域に設置することで実現しています。
クイックコマースの詳細については、「クイックコマースとは?意味やECサイトとの違い、海外の事例を紹介」をご参照ください。
・24時間365日のカスタマーサポート体制
ユーザーが安心して買い物を楽しめるよう、フリップカートは24時間365日のカスタマーサポート体制を整備しています。また、返品・返金がスムーズに行える仕組みを導入しており、購入後のサポートの充実がユーザーからの信頼獲得につながっています。
日本企業はフリップカートに出店できる?
インドにおける影響力の強さから、フリップカートに自社の商品を出品したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。実際にフリップカートを販路として活用できれば、大きなビジネスチャンスが期待できます。
しかし、日本企業がFlipkartに自社で直接出店・在庫保有して販売するのは容易ではなく、インドの法規制・現地税務・物流体制などをクリアする必要があります。実務上は、現地のパートナー企業や代理店を通じて出品・流通を担ってもらう形が一般的です。そのため、インドのEC市場へ参入する際には、現地のパートナー企業の選定や契約条件の確認が重要と言えるでしょう。
プルーヴでは、こうした課題解決の支援として「海外提携先の開拓・選定支援」を提供しています。パートナー企業の選定でお悩みのご担当者様は、ぜひお気軽にお問合せください。
フリップカートが成長した背景
なぜフリップカートは、ここまで大きな企業へと成長できたのでしょうか。その背景には、インドの著しい経済成長とデジタル化の進展があります。ここでは、フリップカートが成長した背景として、インド市場の3つの特徴を解説します。
世界最多の人口
インドの人口はおよそ14億人に達し、すでに中国を抜いて世界最多です。膨大な人口は、巨大な需要があることを意味します。消費者が多ければ多いほど、オンラインショッピングの利用者も増加し、EC市場全体の拡大につながります。つまり、膨大な人口に支えられた需要が、フリップカートの成長の大きな原動力となりました。
デジタルネイティブ世代の割合が高い
インドでは、スマートフォンの普及とともに、オンライン決済やモバイルショッピングが急速に広がっています。その背景には、「デジタルネイティブ」と呼ばれる若年層が多いという特徴があります。
実際に、インドの人口の年齢の中央値は 28.4歳(2024年時点) です。
一方、日本の人口の年齢の中央値は 約49歳(2024~25年時点) に達しており、インドと比べて圧倒的に若い世代が多いことがわかります。こうしたデジタルネイティブ世代の多さが、フリップカートの成長を後押ししました。
EC市場の拡大
インドのEC市場は、コロナ禍をきっかけに急成長を遂げました。非接触型の購買行動が浸透し、オンラインショッピングの需要が拡大したためです。現在も年間20%以上の成長率を維持しており、フリップカートは、この市場拡大の波に乗ることで成長を遂げたと言えます。
インドのEC市場のシェア率
インドのEC市場の規模は、2024年に1,205億ドルに達し、前年から20%以上の成長を記録しました。急激な成長を続けるこの分野においてシェアを獲得しているのは、ウォルマートとAmazonの2大勢力です。
ウォルマートは、フリップカートのほかに、ファッションEC「ミントラ(Myntra)」も運営しています。一方、アマゾンはインド専用のECサイト「Amazon.in」を展開しています。
インドのEC市場における上位10社の売上高の構成割合は次のとおりです 。

参考:ECDB「Walmart and Amazon Dominate Top 10 Marketplace Ranking in India With 83% of Revenues」
このデータからもわかるように、フリップカートがインドでトップシェアを誇り、Amazonがそれに続いています。さらに、ウォルマート傘下のミントラが3位に位置している状態です。
このように、インドのEC市場はウォルマートとAmazonの二強状態にあります。
インド市場への進出を検討しよう
インドは、世界最多の人口と高い経済成長率を背景に、今後もEC市場の拡大が期待される国です。特に、フリップカートやAmazonなどのプラットフォームが市場の成長を牽引しています。
日本企業にとっても、これらのプラットフォームに出品することで大きなビジネスチャンスが期待できます。この機会に、成長著しいインド市場への進出を検討してみてはいかがでしょうか。
