グローバルサウスとは?抱える課題や日本との関係をわかりやすく解説

ニュースや国際会議で「グローバルサウス」という言葉を耳にする機会が増えています。その背景には、欧米諸国や中国の企業からの投資が拡大し、新興市場の獲得をめぐる競争が激化していることが挙げられます。 

こうした動向から、グローバルサウスは企業にとって、重要な地域の一つと言えるでしょう。しかし、どの国や地域が含まれるのか、どのような課題を抱えているのか、なぜ今注目されているのかといった点を的確に説明できる方はまだ多くないかもしれません。 

そこで本記事ではビジネスパーソンに向けて、グローバルサウスの基礎知識や日本との関係性をわかりやすく解説します。 

グローバルサウスとは 

グローバルサウスとは、一般的にアフリカ、ラテンアメリカ、アジアに位置する新興国や開発途上国を指す言葉です。多くの国が南半球に位置することから、このように呼ばれるようになりましたが、明確な国や地域の基準は定まっていません。 

この言葉は、新興国や開発途上国を広く示すだけでなく、冷戦期に東西いずれの陣営にも属さなかった「第三世界」と重なる意味合いで使われることもあります。 

また、1964年に発足した国連の「G77」に中国を加えた国々をグローバルサウスと呼ぶ場合もありますが、近年では中国を含めずに使われることが多いです。なお、G77は現在130以上の開発途上国が参加する大きな枠組みに発展しています。 

BRICSとの違い 

グローバルサウスとよく混同されがちな概念に「BRICS(ブリックス)」があります。BRICSは、以下の5カ国が主導する新興国を中心とした枠組みです。 

B:ブラジル 

R:ロシア 

I:インド 

C:中国 

S:南アフリカ 

現在は、エジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)、インドネシアが加わり、規模が拡大しています。 
つまり、BRICSが特定の国々による公式な枠組みであるのに対し、グローバルサウスは新興国や開発途上国全体を指す広義の総称です。 

グローバルノースとは 

グローバルサウスの対義語がグローバルノースです。 
グローバルノースとは、先進国や経済的に豊かな国を指す言葉です。欧米など北半球に位置する国が多いことから、このように呼ばれています。なお、日本もグローバルノースに含まれます。 
また、グローバルサウスとグローバルノースの間に存在する経済格差は「南北問題」と呼ばれ、国際社会における重要な課題の一つです。 

グローバルサウスが抱える課題 

グローバルサウスは、インドのように経済成長の著しい国がある一方で、深刻な課題を抱えている国々も多くあります。ここでは、グローバルサウスの多くが抱える課題について解説します。 

貧困問題 

グローバルサウスの国々には、「国際貧困ライン」(1日あたり2.15ドル未満)以下で生活する極度の貧困層が多数います。特に、サブサハラ・アフリカ(ナイジェリア、コンゴ、エチオピア、タンザニアなど)や、南アジア(インド、バングラデシュなど)に貧困層が集中しています。世界全体では、およそ6人に1人の子どもが極度の貧困状態にあり、その中でもサハラ以南のアフリカ地域が約40%を占めているのが現状です。 

環境問題 

多くの先進国は、プラスチックごみや有害廃棄物を海外に輸出しています。かつては中国が主要な受け入れ先でしたが、2017年に輸入を禁止したことをきっかけに、これらの廃棄物はグローバルサウスの国々へと輸出されるようになりました。こうした廃棄物は、現地の環境を汚染し、住民の健康に深刻な影響を及ぼしています。 
さらに、ファストファッションによって大量生産された衣類も、中古品としてグローバルサウスに輸出されています。しかし、傷んだ衣類も多く含まれているのが現状です。それらの衣類は、現地で廃棄されることで新たな環境問題を引き起こしています。 

人権問題 

多くのグローバルサウスの国々では、児童労働や強制労働といった人権問題が依然として根強く残っています。さらに、女性や性的マイノリティに対する差別、雇用機会の格差といった課題も深刻です。加えて、先進国の企業が製品を安価に大量生産するために、現地の労働者が低賃金で不当に使われている実態も見逃せません。こうした搾取的な構造は、グローバルサウスにおける人権侵害の一因となっています。 

教育格差 

ユニセフ(国際連合児童基金)によると、世界の10歳児の約7割が「学習の貧困」にあるとされています。「学習の貧困」とは、10歳までに基本的な文章を読んで理解する力が身についていない状態のことです。 
特に、サハラ以南のアフリカではその割合が89%にのぼり、低・中所得国でも57%と高い水準です。このような学習機会の欠如は、子どもたちの将来の収入機会を大きく損ない、世界全体のGDPの17%に相当する生涯所得が失われると指摘されています。 
 参考:ユニセフ「教育危機10歳児の7割が“学習の貧困”生涯年収21兆米ドル損失のおそれ」 

グローバルサウスが注目される背景 

多くの課題を抱えるグローバルサウスが先進国などから注目される背景には、次の2点が挙げられます。 

米中を上回る経済規模に成長する 

グローバルサウスの中には、インドのように急速な経済成長を遂げている国もあります。その結果、グローバルサウス全体の市場規模は拡大を続けており、2050年までに名目GDPでアメリカや中国を上回る見込みです。このような市場規模の拡大は、先進国の企業にとって、非常に魅力的なビジネスチャンスとなっています。 

2050年には世界人口の3分の2を占める 

先進国の多くでは人口が横ばい、もしくは減少傾向にある一方で、グローバルサウスでは今後も人口の増加が見込まれています。2050年には、世界人口の約3分の2をグローバルサウスの国々が占める見込みです。人口の増加は労働力の拡大につながり、経済成長の大きな推進力となります。
そのため、今後グローバルサウスでは急速な市場拡大が進むと考えられています。 

G7サミットにおける議論 

グローバルサウスは国際会議でも頻繁に取り上げられるテーマとなっています。
代表的な例が、2023年に日本で開催されたG7広島サミットです。サミットでは、グローバルサウスとの連携が主要な議題の一つとされ、アフリカや中東の食糧危機に直面する国や地域への支援継続が約束されました。さらに、2027年までに最大6,000億ドルの資金を動員する目標の達成についても再確認されました。こうした世界からの資金がグローバルサウスに流れ込むため、企業にとって新たなビジネスチャンスが広がっています。 

G7サミットについて詳しく知りたい方は、「2025年G7サミット|開催地やスケジュール、議題候補を解説」の記事も併せてご覧ください。 

日本とグローバルサウスの関係 

日本政府は外交・経済の両面から、グローバルサウスとの関係強化に積極的に取り組んでいます。 

インドとの関係強化を模索 

日本は食料や鉱物資源、エネルギーなどの多くを海外に依存しているため、グローバルサウスとの協力は不可欠です。2023年のG7広島サミットでは議長国である日本がインドを招待するなど、グローバルサウスの中でも、特にインドとの関係強化を重視しています。
このような政府の取り組みは、グローバルサウスにおける日本の影響力を強化する狙いがあります。 

グローバルサウス補助金を創設 

日本政府は、グローバルサウスの市場活性化と経済連携の強化を目的として、2023年(令和5年)に「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」を創設しました。 

この制度では、グローバルサウスにおけるFS(フィジビリティスタディ)事業や実証事業の実施に必要な費用の一部を補助し、日本企業の現地進出を支援しています。こうした取り組みを通じて、日本政府はグローバルサウス諸国が抱える社会課題の解決に貢献することを目指しています。 
 ※FS事業とは、新規事業の実現可能性を事前に調査・分析するプロジェクトのことです。 

グローバルサウスには多くのビジネスチャンスがある 

グローバルサウスは、経済規模の拡大や人口増加を背景に、今後ますます重要な市場になると期待されています。日本企業にとっても、世界の資金が流入している同地域は多くのビジネスチャンスが見込めます。今後の日本政府の政策やグローバルサウスとの関係強化の動きに、引き続き注目しましょう。 

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