リンカーン・エレクトリック・ホールディングスの会社概要と業績を紹介

リンカーン・エレクトリック・ホールディングス(以降は「リンカーン・エレクトリック」と言います。)は、125年以上の歴史を持つ溶接機器の大手メーカーです。世界の71カ所に製造拠点を持ち、160カ国で事業を展開しています。

溶接機器・溶接材料業界において世界シェアNo.1を獲得しており、世界進出に成功したグローバル企業と言えるでしょう。本記事では海外進出を検討しているビジネスパーソンに向けて、リンカーン・エレクトリックの会社概要と業績、成長戦略を紹介します。

参考:ディールラボ「溶接機器・溶接材料業界の世界市場シェアの分析

リンカーン・エレクトリックとはどんな会社

出典:リンカーン・エレクトリック

リンカーン・エレクトリックは、アメリカに本社を置く溶接機器の大手メーカーです。アーク溶接機やロボット溶接システムなどの製品を展開しています。この章では、同社の会社概要や歴史、事業内容を紹介します。

※アーク溶接機とは、空気中の放電現象(アーク放電)を利用して金属を溶接する機器です。

会社概要

リンカーン・エレクトリックの会社概要は以下のとおりです。

会社名Lincoln Electric Holdings, Inc.
本社アメリカ
設立1895年
進出地域160カ国
製造拠点71拠点
従業員数12,000人
売上高42億ドル(2023年)

歴史

1895年、リンカーン・エレクトリックは、ジョン・C・リンカーンにより設立されました。1907年に弟のジェームズ・F・リンカーンを会社に迎え入れ、1911年には可変電圧アーク溶接機の開発に成功しました。

1917年にリンカーン電気溶接学校を設立し、技術者の指導にも注力します。同学校では、これまでに10万人以上の生徒が訓練をしています。

1980年代初頭、アメリカの不況により同社の売上が40%近く減少したため、16カ国に進出し販路を拡大しました。現在は160カ国に進出し、世界シェアNo.1を獲得するなど、溶接業界のリーダーとしての地位を確立しています。

事業内容

リンカーン・エレクトリックの事業内容は、溶接や切断に関連する製品の開発・販売です。具体的には、以下のような製品を取り扱っています。

  • 溶接機器
  • ロボット溶接システム
  • 溶接トレーニング機器
  • 切断機器
  • 自動切断システム
  • ロボット研磨システム
  • フィラーメタル
  • 個人用保護具

※フィラーメタルとは、溶接時に使用する金属製の棒のことです。

リンカーン・エレクトリックの経営状況

リンカーン・エレクトリックの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:リンカーン・エレクトリック「Annual Reports

2023年の売上高は42億ドル(6,300億円)で、2022年の38億ドル(5,700億円)から4億ドル(600億円)増加しました。それに伴い、2023年の営業利益は7億ドル(1,050億円)で、2022年の6億ドル(900億円)から1億ドル(150億円)増加しました。※1ドル=150円換算

2023年は50以上の新製品を投入することで、売上高が過去最高を更新するなど、記録的な成長を遂げています。

また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:リンカーン・エレクトリック「Annual Reports

アメリカ国内の売上高が57.2%であることから、リンカーン・エレクトリックの2023年の海外売上比率は42.8%であることが分かります。

リンカーン・エレクトリックの事業別売上高の推移

リンカーン・エレクトリックの事業は、アメリカ溶接・国際溶接・ハリス製品グループの3つに分類されています。

アメリカ溶接事業は、北アメリカ・南アメリカにおける溶接事業です。国際溶接事業は、ヨーロッパ・アフリカ・アジア・オーストラリアなどの溶接事業です。ハリス製品グループ事業は、切断機器やフィラーメタルなどの製品に加えて、アメリカでの小売事業を含みます。

この章では、各事業の売上高から同社の経営状況を深掘りします。事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:リンカーン・エレクトリック「Annual Reports

2023年のアメリカ溶接事業と国際溶接事業の売上高を合わせると、売上高全体の88.2%を占めており、同社の主要事業は溶接事業であると言えます。

以下より、各事業の売上高とEBITの推移を紹介します。※EBITは、利息及び税金控除前利益のことです。

アメリカ溶接

アメリカ溶接事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

参考:リンカーン・エレクトリック「Annual Reports

2023年の売上高は26億6,000万ドル(3,990億円)で、2022年の22億9,000万ドル(3,435億円)から3億7,000万ドル(555億円)増加しました。2023年のEBITは5億3,000万ドル(795億円)で、2022年の4億7,000万ドル(705億円)から6,000万ドル(90億円)増加しました。

売上高は3年連続で拡大しており、同社の成長を牽引している事業と言えます。また、2023年の好調の要因として、需要の増加と製品の値上げによる影響が挙げられます。

国際溶接

国際溶接事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

参考:リンカーン・エレクトリック「Annual Reports

2023年の売上高は10億4,000万ドル(1,560億円)で、2022年の9億5,000万ドル(1,425億円)から9,000万ドル(135億円)増加しました。2023年のEBITは1億5,000万ドル(225億円)で、2022年の1億1,000万ドル(165億円)から4,000万ドル(60億円)増加しました。2023年の好調の要因として、アメリカ溶接事業と同様に、需要の増加と製品の値上げによる影響が挙げられます。

ハリス製品グループ

ハリス製品グループ事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

参考:リンカーン・エレクトリック「Annual Reports

2023年の売上高は5億ドル(750億円)で、2022年の5億2,000万ドル(780億円)から2,000万ドル(30億円)減少しました。一方、2023年のEBITは7,000万ドル(105億円)で、2022年の6,000万ドル(90億円)から1,000万ドル(15億円)増加しました。

売上高が減少した要因は、製品の値上げ以上に需要の減少による影響が大きかったためです。

リンカーン・エレクトリックの成長戦略

リンカーン・エレクトリックは2025年の主な目標として、売上高の年平均成長率が1桁台後半から2桁台前半を掲げています。そして、目標達成のために、以下の4項目を重要視しています。

  • 顧客重視:顧客管理システムを活用し、価値提案と取引のしやすさを強化すること
  • 従業員の能力開発:従業員が学び、成長する機会を提供すること
  • ソリューションと価値:ソフトウェアの強化や新製品の効率性・持続可能性を向上させること
  • オペレーション・エクセレンス:デジタル化や継続的な改善により業務効率化を図ること

まとめ

リンカーン・エレクトリックは、125年以上の歴史を持つ溶接機器の大手メーカーです。160カ国以上に事業を展開しており、2023年の海外売上比率は42.8%でした。

さらに、2024年7月にはヴァネア・マニュファクチャリング社を買収し、メンテナンス及び修理用消耗品の提供を強化しています。世界シェアNo.1の製品に加えて、カスタマーサービスも強化することで、同社の影響力はますます高まると予想されます。

このように、リンカーン・エレクトリックは自社の強みである溶接機器に特化することで、海外進出に成功した企業です。海外進出を検討している方は、1つの方法として同社の戦略を参考にしてみましょう。

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