テレワークソリューションのまとめ、効果と課題、日本企業の取り組み状況・海外IT企業の取り組み状況の紹介

パンデミックの恐怖の中、新型コロナウイルス対策のため、テレワークを検討する企業が増えています。

2012年「アベノミクス」の成長戦略の中にテレワークも含まれており、ワーク・ライフ・バランスの改善や通勤の混雑・渋滞の緩和、災害時・非常時の事業継続など、さまざまな観点から期待が寄せられていました。

国土交通省による「平成29年度 テレワーク人口実態調査」のデータでは、テレワーク制度等のある雇用型テレワーカーが9%。浸透率はかなり低い状況が続いていました。

しかし、新型コロナウイルスが日本でも発生し、状況は意図せず急変しました。

テレワークを導入する企業が増え、テレワークに対する敷居が下がっています。

恒常的なテレワークがさらに増える可能性もあるでしょう。

この記事では急速に拡大しているテレワークの現状や課題、企業の取り組み事例についてお話します。

テレワークとは

テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。

一般社団法人日本テレワーク協会によると、テレワークは働く場所によって①自宅利用型テレワーク(在宅勤務)②モバイルワーク③施設利用型テレワーク(サテライトオフィス勤務など)の3つ分けられますが、ここでは今回のコロナウイルス拡大によって急速に広まった①「自宅利用型テレワーク(在宅勤務)」について触れたいと思います。

テレワークの効果

一般社団法人日本テレワーク協会によると、テレワークの効果は7つあると言われています。

  1. 事業継続性の確保:非常災害時やパンデミック時における事業継続
  2. 環境負荷の軽減:通勤現象、オフィスの省力化による電力、CO2削減
  3. 生産性の向上:顧客への迅速・的確な対応(主に営業)など
  4. ワーク・ライフ・バランスの実現:家族と過ごす時間の増加(仕事と生活の緩和)
  5. 優秀な社員の確保:育児期・介護期当の社員への働きやすい環境の実現による離職防止
  6. オフィスコスト削減:ペーパーコスト、交通コストの削減
  7. 雇用創出と労働力想像:退職した高齢者、通勤が困難な障がい者、遠方住居者などの新規顧客の創出
テレワークの効果

(引用:https://japan-telework.or.jp/tw_about-2/tw_effect/)

上記7つの効果のうち「事業継続性の確保」、「優秀な社員の確保」、」オフィスコスト・交通コストの削減」をもう少し詳しく見てみましょう。

事業継続性の確保

万が一地震や台風などの大規模災害が発生してオフィスが壊滅的な被害を受けた場合でも、被害を受けなかった地域で働くテレワーカーにより経営への影響を最小限にとどめることが可能です。

ワークライフバランスの実現

少子高齢化などの社会背景を受け、働き手は年々減少し続けています。中でも多くの女性は、出産育児・介護などの理由で未だに離職をせざるを得ないという状況にあります。

そのため、女性がそのような状況下にあっても働ける環境があることは魅力です。企業にとっても人材不足解消につながるでしょう。

優秀な社員の確保

実際に総務省主催の平成29年度テレワーク先駆者百選に選ばれた「株式会社ガイアックス」では、2015年度に38%あった離職率がテレワークを導入した翌年2016年度には8%にまで下がりました。

ワークライフバランスを実現すると従業員は会社に対する不満が減少し、「長くこの会社で働きたい」と考えるようになります。

オフィスコスト・交通コストの削減

厚生労働省が委託し運営しているテレワーク相談センターによると、テレワークによるオフィスコスト削減の事例として年間約1,500万円のオフィスコスト及び年間約3,000万円の時間外手当コストを削減した企業もあるとのです。

在宅勤務になると会社は通勤交通費を支給する必要がなくなります。

また、環境さえ整えば全国どこでも業務を行うことが可能です。これにより交通費や出張費などの従業員の移動コストが削減できます。

上記3つに1つ重要な効果があります。それは「企業イメージの向上」です。

テレワーク導入による働き方改革を進める企業は、いわゆるホワイト企業と見られることが多くあります。

今回コロナウイルス感染拡大で重要視されたリモートワークは、今後転職先や就職先を選ぶ際の新たな判断基準となるかもしれません。

コロナウイルス感染拡大後の浸透と課題

実際にリモートワークを取り入れた企業はどれくらいあるのでしょうか。

具体的にどのように浸透いているか、そして浮き彫りになった課題は何があるか、について見てみましょう。

導入状況

総務省(2019)11を基に、企業のテレワーク導入状況を見てみると2018年は13.9%でしたが、2019年は19.1%と前年に比べ6%上がりました。

コロナウイルスの感染拡大が始まった後、東京商工会議所は2020年3月13日~31日に会員企業1万3297社にアンケート調査(1333社が回答)を行いました。

テレワークを「実施している」と回答した企業の割合は26.0%でした。

従業員規模が大きい企業ほど実施率が高く、「実施検討中」とした企業は19.5%だったということです。

このデータと総務省のデータは対象者数も期間も違うので比較になりませんが、感染拡大の影響で増えていることが分かります。

さらに、4月の都庁の調査では、都内企業のテレワークの導入率 ( 都内にある従業員30人以上の企業が対象 )は62.7%と急上昇しました。

これは都内だけのデータになりますが、感染の被害から身を守るための対策が数値にはっきりと表れています。

問題点

一時的かこれからもまだ延長されるか現状まだ様子見ではありますが、急速にリモートワークが取り入れられたことに戸惑う人も多くいます。

また、今までリモートワークのシステムを整えて来ずにやむ終えずリモートワークに舵を取った企業が課題に直面しています。

情報漏洩のリスクが高まる

ZoomやTeamsなど、オンラインで会議に参加できるWeb会議システムやテレビ会議システムといったツールは大企業だけでなく中小企業も簡単に取り入れられるため、導入は比較的スムーズだったかもしれません。

しかし、オフィス以外の業務は情報漏洩リスクを高め、社員の不注意によるPC盗難は機密情報紛失につながります。

リモートワークに慣れていない企業がITの情報リスクが浮き彫りになってきています。

ITセキュリティ対策が十分であったにも関わらずサイバー攻撃を受けた企業の事例を見てみましょう。

  • セキュリティ運用プロセスサービスを提供するVMware Carbon Blackは5月14日、新型コロナウイルス感染症が世界で急拡大した2~4月にかけて、金融機関を狙ったサイバー攻撃が238%急増したと発表した。
  • 5月上旬、抗ウイルス薬「レムデシビル」を作っているアメリカの製薬大手が、イラン政府系のハッカー集団からサイバー攻撃を受けたと報じられた。
  • 朝日新聞は5月9日、ホンダに対するサイバー攻撃は感染したパソコンを暗号化したりすることで使用不能にし、解除のために金銭を要求するランサムウエアが全社的に広がったものとみられると報じた。

捺印

同上のドリーム・アーツの調査では、テレワークに不便があると9割が回答したそうです。

その中で最も困ったことは、ニュースでもよく取り上げられていますが、日本の伝統的な慣習である「捺印」です。

  • 「オフィスに保存してある紙書類の確認・入手ができない」(46%)
  • 「書類へのサインや捺印がもらえない」(28%)

上記の回答により、紙・ハンコ業務がテレワーク遂行の妨げであることが明らかになりました。

現状、物理的なハンコによる捺印が必要な企業が5割超。

これから感染拡大を防止するために日本企業が向き合って臨機応変に対応していかなければいけない風習かもしれません。

社員の管理が難しい

エン・ジャパン株式会社が行った中小企業の「テレワーク」実態調査によると、テレワーク導入の上で難しかったことの上位に「テレワーク社員の時間管理」を挙げていますが、これは「業務中にさぼっていないか」ということです。

リクルートマネジメントソリューションの調査では、実際に約60%の上司が部下に対して「部下がさぼっていないか心配」と答えています。「成果の報告を義務付ける」などの企業の工夫が今後必要になってくるでしょう。

勤務先にテレワーク出来る制度や環境が整っていない

セキュリティ対策や勤怠管理方法、人事評価方法、コミュニケーションの面等で不安があり在宅勤務導入ができない企業もあるようですが、これらの課題は中小企業に多く見られるようです。

日本の大手企業のテレワーク導入事例

リコーやAGCなど、大手企業の中には通勤時間削減や効率化にメリットのある在宅勤務を標準化しようとする企業が出てきました。

それでは実際に大企業がどのような取り組みを始めているか見てみましょう。

富士通グループ

富士通グループは、2020年5月25日の緊急事態宣言解除後も在宅ワーク続行のスタンスを取っています。

  • 「在宅テレワーク勤務を基本とし、必要最低限の出勤にとどめる」
  • 「一挙にオフィスでの業務を再開するのではなく段階的に再開するとともに、オフィスでのソーシャルディスタンスを考慮し出勤率を最25%程度にコントロールする」
  • 「海外出張、国内遠地出張は原則禁止とし、ウェブ会議を最大限活用する」

具体的に上記3つの基本方針を発表しました。(参照:https://pr.fujitsu.com/jp/news/2020/03/24.html

NTTグループ

NTTコミュニケーションズでは緊急事態宣言解除後もテレワークを続行しています。

全国7400人の従業員のうち約8割以上がテレワークをしているそうです。

2020年6月以降もテレワークを活用し出社する従業員を減らす、出社した場合もなるべく会議室などでは距離を取るなどの対策をしているようです。

GMO

コロナウイルスの感染がまだ初期段階だった頃にいち早くリモートワークを取り入れたのがGMOです。

グループ企業の半分の従業員をすぐに在宅勤務にシフトさせたことがニュースに大々的に取り上げられました。

下記はGMOのHPに掲載されている「多様な働き方への対応」の施策です。

GMOのポリシー

(GMOのHPから抜粋:https://www.gmo.jp/news/article/6803/

「リモートワークを推奨する」下記のような補助金や手当も社員に支給していたようです。

これだけ準備が周到だったこともあってどの企業よりも早くスムーズに在宅勤務に切り替えることができたのでしょう。

リモートワーク快適化支援

GMOの熊谷社長は今回のリモートワークへの導入について「今回の意思決定は、決して特別なことではありませんでした。事業計画のマニュアルに従って、手続き通りに発令しただけなんです」と日経XTECKのインタビューで答えています。

この事業計画は2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)の時からその重要性について考え始めたとのことです。以前から危機感を持っていたこのようなビジネスへのスタンスはこれから多くの日本企業が学ばなければなりません。

海外IT企業の取り組み

Facebook

フェイスブックは新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が徐々に解除されるのに合わせ、「7月6日にオフィスを再開する予定」と当初は発表していましたが、「今年末まで続ける」と改めました。

テクノロジー企業の中では最も速く従業員に在宅勤務を要請した、各従業員には在宅勤務と子育てのためとして1000ドル(約10万6000円)のボーナスを支給しているそうです。

Google

GoogleもFacebook同様、当初は6月1日まで続けるとしていたが、7カ月間延長することを決めている。

従業員の多くに2020年末まで在宅勤務を許可することを社内に通知しました。

Twitter

Twitterはリモートワークに対して最も大胆な姿勢を取っています。

従業員に対して恒久的にリモートワークが可能と伝えています。

オフィスでの業務再開は、マスク着用、赤外線カメラによる体温計測、手の消毒などの安全対策を徹底していく方針です。

 中小企業の在宅ワーク事情

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、大企業だけでなく中小企業においてもテレワークの導入・検討する企業が徐々に増えてきているようです。

しかし、中小企業のテレワークの浸透は大企業ほど進んでいないのが実情です。

これは、大企業やIT企業においては、テレワークでの業務が可能なオフィス勤務者が多い一方で、小売業、サービス業における店舗・製造業などの工場・建設業の現場への勤務である業種では難しいことを意味しています。

これらの業種は中小企業が担っていることも多く、「企業としてテレワークを実践する」という表現自体に違和感を持つ中堅・中小企業も多いのが現状と言われています。

東京商工会議所は中小企業を対象に3月に実施したアンケートで、テレワークを実施していると回答したのは全体の26%で、従業員50人以下の企業では14%でした。

テレワーク導入の中小企業

ITソリューションサービスを提供するドリーム・アーツが行ったアンケートと比較してみましょう。

2020年4月18日~19日にかけて実施したこのアンケートでは大企業の方が中小企業に比べてリモートワークが進んでいることを示しています。

従業員1,000人以上を持つ企業に対し、従業員1,000人に調査をしたところ、45%が在宅勤務をしていると答えました。

企業のテレワーク状況

(参照:https://webtan.impress.co.jp/n/2020/05/15/36021

調査対象期間や人数は違いますが、大企業と中小企業は大きく差が開いていることが分かります。

中小企業には専任のIT担当者がいないことも多く、ITをどのように活用できるかのノウハウがなく導入しにくい現状があるようです。

それにより労務管理や人事評価の適切な整備もできず、リモートワーク導入に二の足を踏んでしまっている企業が多いのではないでしょうか。

リモートで推進する海外事業

移動という概念がなくなり、グローバルがより身近になった

今まで海外事業を推進するうえで、日本は島国である関係上、「海外出張」「海外渡航」が必要不可欠であり、ビジネス推進における1つのハードルとなっていました。

しかし、コロナショックに伴い、リモートワークおよびWeb会議の文化が大きく浸透し、今後は「海外出張」「海外渡航」はMUSTではなくBETTERもしくはNO NEEDになる可能性があります。

当社ではオンラインコミュニケーション手法が下記のように変化し、ボーダレス化が急展開すると考えています。

海外企業とのコミュニケーション手法の変化によるボーダーレス化の急進展

ただし、海外出張をしなくてよい状況になるためには、海外ビジネスをリモートで行える仕組みや体制構築が必要となります。

プルーヴ株式会社ではそういった、オンラインで海外事業を推進するためのお手伝いを積極的に進めていきます。

PROVEのウィズコロナ・アフターコロナ時代における海外事業サポート

まずはお気軽にお問合せください。

■参考資料:
https://japan-telework.or.jp/tw_about-2/

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2004/24/news001.html

https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO5928113019052020000000/

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/041400526/

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd124210.html

https://www.news24.jp/articles/2020/05/12/07641365.html

https://www.nice2meet.us/reality-in-remote-work

https://japan.zdnet.com/article/35153824/

https://www.jbsvc.co.jp/useful/security/COVID-19_security.html

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/04117/

https://www.businessinsider.jp/post-212756

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