新規事業を海外展開する際の課題

当社では、お客様からの依頼をもとに海外進出における現地の市場調査から進出サポートまで行っています。しかし、展開したい商材が新製品や新規事業であった場合、ヒアリングや交渉の進め方には注意が必要です。
今回は、一つのプロジェクトを例に挙げて、新規事業を海外展開する際のポイントと課題についてお伝えします。

開発中の新製品を対象としたヒアリング

今回のプロジェクトでは、お客様が開発中の新製品が調査対象となっていました。その製品は日本でもまだ販売されておらず、海外展開を視野に入れて企画されたものです。
そのため、単なる市場調査だけでなく、データを取るために現地で実証実験を行う可能性も含めたヒアリングを行うことになりました。
私はお客様と共に進出検討国へ向かい、現地の事業関係者や政府機関、その分野で高い知見を持つ有識者の元を訪ねました。
事前に別の担当者が何度か足を運び、現地との関係性を作ってくれたこともあって、お客様を含めた交渉はスムーズに進む予定でした。
ところが、ヒアリングを進めていくうちに、開発中の新製品は企画段階から現地のニーズや実情に合っていないことが分かってきたのです。
現地での実証実験についても、日本企業側のルールによって先方に不利な条件となってしまい、交渉は難航しました。

日本企業の生真面目さが交渉を滞らせることも

このような事態が起きた背景には、最初から日本側の視点だけで企画を考えていたという問題がありました。
デスクリサーチをどれだけ綿密に行っても、現地のリアルタイムな実情やそこに根付く文化、慣習などは実際に足を運んでみないと分からない部分もたくさんあります。
日本のビジネスモデルにとらわれ、日本企業のルールの中だけで物事を考えてしまうと、なかなか現地のニーズに見合ったものは生まれません。
今回のように製品が開発中の場合はデータが集まらず、交渉相手に提示できる資料が不十分なこともあるでしょう。
そういった場合、海外では暫定的なデータであっても数字を提示することがありますが、リスクを恐れる日本企業では検証が不十分な数字を提示することは少ないと思います。
常識やルールを守ることはもちろん大切ですが、それで交渉がストップしてしまっては元も子もありません。

諦めずに別の可能性を探ることで道が開ける

新規事業を海外展開する際に重要なのは、たとえ交渉相手に十分なデータが提示できなくても、思考停止せずにいろいろな角度からのアプローチを行うことではないでしょうか。
データが出そろうまでただ待つのではなく、試行錯誤を繰り返すことで新たな可能性や選択肢を見出すこともできるはずです。
今回の調査でも、ヒアリングを粘り強く重ねるうちに新たな人物や機関が浮上することがあり、1つの方法がダメでもまた別の方法があるということに改めて気付きました。
今回はお客様と一緒の訪問だったため、出張中に「次に行く時にはこの話を省いて、違うポイントを推しましょう」といったアドバイスができたことも幸いしました。
お客様自身も現地で直接話を聞くことに意義を感じたようで、たとえ今回の出張が120%の達成感がなかったとしても、次の提案に生かせる貴重な経験になったのではないかと思います。

日本の常識やルールにとわられず、真のニーズを探る

交渉の進め方はもちろん、ビジネスモデルを考える段階から日本側の視点に偏り過ぎないことが重要です。
今回はお客様が全て企画を立案しましたが、もし我々が企画から関われていたら、もっと効率の良い提案やヒアリングができたのではないかという反省もありました。
海外では日本のビジネスモデルが通用しない場面も多く、現地の知見をもった第三者の声を取り入れることは非常に大切です。
今回のプロジェクトであらためて感じたのは、日本企業の生真面目さは美徳である一方、海外進出時においては大きな弱点になる可能性もあるということです。
日本の常識やルールにばかりとらわれず、現地の声に耳を傾け、本当に必要とされているものは何なのかを探ることが大きな課題となります。
「グローバルを身近に」をミッションとしているプルーヴでは、こうした日本企業の在り方、交渉の進め方を改めて問うべきではないかと考えています。

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