エフ・ホフマン・ラ・ロシュとはどんな会社?会社概要や業績を解説

エフ・ホフマン・ラ・ロシュ(以降は、「ロシュ」と言います。)は、スイスのバーゼルに本社を置く世界有数の製薬会社です。125年以上の歴史を持ち、150カ国以上で事業を展開しています。本記事ではロシュの会社概要や経営状況、成長戦略について紹介します。

ロシュとはどんな会社

出典:ロシュ

ロシュはがんやウイルス感染症、中枢神経障害、炎症性疾患などの医薬品を開発・販売している製薬会社です。同社はAnswersNewsの調査において、2023年の製薬会社の売上高ランキングで世界1位を獲得しました。この章では、ロシュの会社概要や歴史、経営理念を紹介します。

参考:AnswersNews「【2024年版】製薬会社世界ランキング―ロシュが3年ぶり首位…2位にメルク浮上、ファイザーが3位

会社概要

ロシュの会社概要は以下のとおりです。

会社名F. Hoffmann-La Roche, Ltd.
本社スイス
設立1896年
進出地域150カ国以上
研究・製造拠点50拠点以上
従業員数10万3,605人(2023年12月31日時点)
売上高587億スイスフラン(2023年度)

歴史

ロシュは、1896年に創業者のフリッツ・ホフマン・ラ・ロシュ氏により設立されました。最初の商品は、初の特許製品の甲状腺薬でした。同社は1897年から1914年にかけて、ヨーロッパやアメリカなど世界各地に進出を果たします。日本への進出も同時期の1904年でした。

1928年から1944年は、ビタミン剤の生産により急成長を遂げます。そして、1950年代初頭から1960年代中頃にかけて、医薬品の研究を強化し、精神安定剤や抗がん剤などの医薬品を開発しました。

1968年には診断市場に参入し、分析機器の開発に着手します。1998年には、ドイツの大手検査薬メーカーのベーリンガー・マンハイム社を買収し、診断市場における世界的なリーダーに成長しました。

2000年から2006年にかけて、ロシュは主要事業に注力するために、香料やビタミン剤の事業を売却しました。近年では、PCR検査試薬や検査機器の提供によって、新型コロナウイルスの感染症対策で重要な役割を果たしています。

経営理念

ロシュは「Doing now what patients need next」をスローガンに掲げています。その意味は、「患者さんが今、必要としている医薬品・診断薬をいち早くお届けするために行動すること」です。

ロシュの経営状況

ロシュの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:ロシュ「Reporting

売上高について2023年度は587億スイスフラン(9兆1,572億円)で、2022年度の632億スイスフラン(9兆8,592億円)に比べて45億スイスフラン(7,020億円)減少しました。同様に、営業利益について2023年度は153億スイスフラン(2兆3,868億円)で、2022年度の174億スイスフラン(2兆7,144億円)に比べて21億スイスフラン(3,276億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因として、新型コロナウイルスの検査需要の急減が挙げられます。※1スイスフラン=156円換算

また、地域別売上高の推移は以下のとおりです。

参考:ロシュ「Reporting

グラフから、ロシュの主要地域は北アメリカです。その中でもアメリカ合衆国の売上高は271億スイスフラン(4兆2,276億円)で、全体の約46%を占めています。次いで、売上高の多い国は43億スイスフラン(6,708億円)の日本です。

ロシュの事業別売上高の構成割合

ロシュの経営状況のうち、事業別売上高に焦点を当てて解説します。事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:ロシュ「Reporting

グラフからロシュの主要事業は医薬品事業であることがわかります。さらに、各事業の製品、売上高と営業利益の推移を紹介します。

医薬品事業

医薬品事業の主要製品は以下のとおりです。

  • 多発性硬化症治療薬のOcrevus(オクレリズマブ)
  • 血友病A治療薬のHemlibra(ヘムライブラ)
  • 抗がん剤のPerjeta(パージェタ)

同事業の売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:ロシュ「Reporting

売上高について2023年度は446億スイスフラン(6兆9,576億円)で、2022年度の455億スイスフラン(7兆980億円)に比べて9億スイスフラン(1,404億円)減少しました。一方、営業利益について2023年度は171億スイスフラン(2兆6,676億円)で、2022年度の148億スイスフラン(2兆3,088億円)に比べて23億スイスフラン(3,588億円)増加しました。売上高が減少した主な要因として、新型コロナウイルスの治療薬「ロナプリーブ」の売上高が2022年度と比較して11億スイスフラン(1,716億円)減少したことが挙げられます。

診断薬・機器事業

診断薬・機器事業の主な製品は、診断薬や分析機器などです。同事業の売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:ロシュ「Reporting

売上高について2023年度は141億スイスフラン(2兆1,996億円)で、2022年度の177億スイスフラン(2兆7,612億円)に比べて36億スイスフラン(5,616億円)減少しました。同様に、営業利益について2023年度は21億スイスフラン(3,276億円)で、2022年度の33億スイスフラン(5,148億円)に比べて12億スイスフラン(1,872億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した主な要因は、新型コロナウイルスの診断薬の需要低迷が挙げられます。

ロシュの成長戦略

ロシュの成長戦略は、「Our Ten-Year Ambitions 2020-2029」です。同戦略では、2020年から2029年の10年間の目標を定めています。具体的な目標は以下のとおりです。

グループ

  • 患者の治療過程全体を革新し、成果を向上させる。
  • 医薬品と診断の強みを組み合わせ、患者の治療過程で満たされていないニーズに対応する。
  • バリューチェーンのあらゆる部分で相乗効果を実現する。

製薬

  • 社会的負担が最も大きい疾患に対処する20種類の革新的な医薬品を提供する。
  • 革新的な医薬品を年間2種類発売する。
  • 業界をリードする研究開発エンジンとパイプラインを構築する。

診断

  • 医療価値の高い診断ソリューションへの患者のアクセスを2倍にする。
  • 新たな医療価値を持つ分析機器を年間5種類発売する。
  • 検査対象患者数を2倍にする。

データとデジタル

  • データとデジタルソリューションでビジネスを変革する。
  • バリューチェーン全体で効率を向上する。
  • デジタル製品によって医薬品や診断サービスの差別化を図る。

ロシュの研究開発費は世界2位

ロシュは、150カ国以上で医薬品や診断薬を販売している製薬企業です。125年以上の歴史を持っています。このように、長期間にわたって成長を続ける1つの要因は、研究や開発への積極的な投資です。実際に、AnswersNewsの調査では、2024年の製薬会社・世界研究開発費ランキングで2位(158億ドル)を獲得しています。

製薬分野での事業展開の仕方で悩んでいる経営者様は、同社の方法を参考にしてみてはいかがでしょうか。

参考:AnswersNews「【2024年版】製薬会社世界ランキング―ロシュが3年ぶり首位…2位にメルク浮上、ファイザーが3位

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