タイにおけるコロナ感染拡大とビジネスへの影響

世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス。

東南アジア地域に位置し、日本企業の海外展開先としても多いタイでもその影響は深刻な状況となっています。タイは移動制限や営業規制など早期のコロナ対策に踏み込んだため、感染者数、死者数ともに周辺国や主要国と比べてもはるかに少ない数字を維持しています。

しかし、そうした規制に伴い、経済的に大きな打撃を受けているのも現状です。

 

そんなタイのコロナの現状を今回は詳しく見ていきましょう。

そしてどのような措置が取られ、タイでのビジネス影響はどれくらいあるのかを中心にお伝えしていきます。

 

タイの特徴

タイは人口が約6980万人おり、大多数がタイ族という民族です。

少数ですが、華人系やマレー系の人々も暮らしています。宗教は94%とほとんどが仏教を信仰しており、それ以外の5%はイスラム教が占めています。残り1%はキリスト教などのその他の宗教です。

 

主要産業は農業とされていますが、GDPの12%程度しか占めていません。

一方、製造業の方がGDPの約34%と輸出額の9割ほどを占めているため、国を支える役目を果たしています。

輸出されているものは、自動車やコンピューターとそれらの部品、農作物や食料加工品がメインであり、それら商品の輸出先となっている国は、中国やアメリカ、日本がトップ3となっています。

 

しかしコロナショックにより、輸出が急激に落ち込んだことで、GDPはbeforeコロナの前年比比べてマイナス12.2%になり、1998年のアジア通貨危機に次ぐワースト2位を記録しました。

 

主要国である、アメリカとの関係は、条約上の同盟国でもあり、アジア太平洋地域最大の軍事訓練も、例年タイで開催されている一方で、中国との共同軍事演習も度々行っています。

地理的なことからも中国との関係が強い傾向があり、メコン川という中国とタイを貫流しており、歴史的友好関係も築いています。経済面でも先程述べたように、中国が最大の輸出先、そして輸入先でもあるため、中国依存傾向もかなりあると言えます。

 

そして、インフラ開発において、中国が投資したプロジェクトで高速鉄道などの建設が進められています。

こうしたことからも、様々な面において、中国による投資が増加傾向にあります。

 

2019年4月の時点で、タイに進出している日本企業は1,772社に上ります。

内訳は製造業が691社、非製造業が681社です。

そして、中小企業が大企業より進出が活発で、その数も多いのが特徴です。中小企業が多い理由は後ほどお伝えします。

 

タイにおけるコロナの現状と対策

3月後半に感染者数が1日で200人近くまで増加していたため、政府が同月26日に非常事態宣言を出しました。

この発令では、スーパーマーケットや薬局などの生活必需品を販売している店以外の商業施設を営業停止にし、また日本のように必要のない移動は自粛するよう措置がとられました。

 

期間は初め6月30日までとされており、感染者もかなり減ってきてはいましたが、期間を1か月延長し7月31日までになりました。感染者が劇的に減り始めた5月以降には、規制を一部緩和し、飲食店などの営業を再開させた他、夜間の外出禁止時間の短縮なども行い、5月17日にはショッピングモールも再開しました。

 

早い段階でこのような対策が取られていたため、感染者数が一気に減り、現在では1日で10人にも満たない人数しか国内感染者は出ておらず、8月に入ってからは1日の感染者がゼロの日もあります。

 

しかし、一部規制が緩和したとはいっても長期にわたる規制によって経済の落ち込みは激しくなっています。

国の経済を支えていた観光業や輸出の収益低下により、2020年第一四半期のGDP(国内総生産)はマイナス1.8%となりました。

マイナス成長となったのは実に2014年以来の6年ぶりでした。

観光業ではGDPの2割を占め、観光客のうちおよそ3分の1が中国人だったため、大きな影響を受けました。

外需では、砂糖、タピオカ製品、米といった食品類や電化製品、部品などのサービス輸出が約30%減り、大幅な落ち込みとなりました。

一方内需では、個人の消費支出が前期比が4.1%増加しました。

これは耐久財の自動車などの販売が落ち込んでいますが、非耐久財の食品類の支出が上回って増えたことで、結果的に少し内需が拡大したのです。

 

タイの現地情報について詳しく説明がされたおすすめ動画がYoutube にあります。ぜひ参考にしてみてください。

 

日本企業のビジネスへの影響

このように、非常事態宣言により、生活必需品を扱う店のみの営業となったことで国内における食品や飲料などの必需品は需要が増しましたが、一方移動制限によって自動車を使用する機会も減ったことから、販売不振が起きました。

こうした状況を踏まえて、2020年6月にバンコク日本人商工会議所が発表した1〜6月の上半期における日系企業の景気動向調査によりますと、コロナによって売上高にマイナスな影響を与えたと答えた企業が90%以上でした。

全体的に消費者の収入が減ったこと、商談が円滑に進まず、事業が進まないといったような問題も発生していることが影響しています。

それではタイのGDPを支えている製造業のうち、進出している日本企業への影響は業界別にどのくらいあるのかを見ていきましょう。

 

自動車業界(トヨタ自動車、ホンダ、日産、スズキ、マツダ、ミツビシ、日野、イスズなど)

タイ国内では、日系メーカーの自動車が全体の90%前後と高い販売シェアを有しており、そのうち3割はトヨタ自動車が単独で占めています。

このCovid-19の影響による自動車需要の減少によってタイ国内の完成車メーカーは4月、工場の操業を一時停止し、生産調整を行いました。

部品の調達も中国に依存していたため、さらに状況が悪化し、工場停止によって労働者の休業補償や開校の対応に追われる状況となりました。

 

現在では停止していた工場も再開し、少し持ち直しが見られるものの、結果としてタイ工業連盟(FTI)が8月20日に発表した情報によると、7月の自動車販売台数は約9万台弱であり、前年同月比で48%減少しました。これはbeforeコロナ時代の約半数しか売れていない状況です。

タイで製造された自動車は地産地消ではなく、約半数が海外へ売られています。

アジア通貨危機を機に、アジア以外のオセアニアや北米などにも販路を拡大してきましたが、このコロナウイルスは全世界に悪影響を与えているため、タイ工業連盟は生産台数の見直しを当初の140万台から100万台以下に変更する可能性も出てきています。

 

電機業界(日立、東芝、パナソニック、シャープ、三菱電機、ダイキン、富士通など)

これらの企業はタイで家電製品の人気が高い「日本ブランド」を誇っています。

三菱電機はエアコン、冷蔵庫分野において特に高い評価を得ています。

しかし今年4月、三菱電機のタイ子会社である三菱電機コンシューマー・プロダクツ(タイ)は現地工場で派遣社員1000人以上を一時的に解雇しました。コロナ感染が拡大しているため、受注も減り、生産調整を図るためだとしています。

このようにエアコン分野ではペースダウンウンしていますが、冷蔵ケース・ショーケース市場においては例外であり、例年を上回る勢いで需要が拡大しています。

 

Beforeコロナの過去数年は年間10~15%程度で成長していたのが、今年は前年比で30~40%のペースで拡大しています。これは、コロナによる移動制限や、感染を恐れて消費者があまり外に出ないようになったことから、食料品や飲料を買いだめする傾向が強くなったこと、また、上記のようにコロナの影響で工場などでの仕事を解雇された人々が飲食店の運営に転換する動きも出ていることが一因なのではないかとされています。

 

一方で、ハイテク部品については、半導体やコンピューター部品などについては前年よりも増加傾向です。世界でテレワークが普及していることで、商品の需要が高まったことが背景として考えられます。

 

小売業界

この業界における内需では、有人店舗かEC(Electronic Commerce)かで状況が全く異なっています。有人店舗は4月から6月までのおよそ2 カ月間、小売店やレストランは休業・半稼働体制を取るよう指示が出されました。

また、営業制限以外にも外出禁止令が出されていたことから、今後もさらに来店客は外出を控えることが考えられるため、小売市場の指標は前年比でマイナス20~30%ほどで推移しています。

 

日本企業の中でも、飲食業界は、深刻なダメージを受けました。

世界有数の広い日本食市場をもつタイでは現在、約3600店以上の日本食レストランがあります。

有名な店で言うと、ココイチや吉野家、一風堂などの多くの企業がショッピングモール内を始め、様々な場所に店を展開しています。こうした日本食レストランの経営がコロナの影響で危機的状況にあるため、この状態を打破しようと、あるキャンペーンを立ち上げました。

それは緊急支援としてジェトロのバンコク事務所が大手の通信業界の企業や宅配代行業者と連携して作ったもので、Let’s eat JAPAN という日本食を割引きで食べられるキャンペーンです。

9月5日から、SNS上の会員交流サイトで日本食の写真を投稿し、優秀作品に食事券を渡すといった形です。現在は通常価格の最大半額で食べられるとのことです。

 

このように、有人店舗は試行錯誤の策を考えている中、一方のEC ではそこまで大変な状況にはなっていない様子が伺えます。

ECは名前の通り、オンライン上で商品を買えるシステムであるため、外出せずに家の中でもショッピングすることが可能なので利便性があり、利益は好調となっています。

日本製品はタイで評価が高いことから、店舗販売だけでなく、ECサイトでの販売を進めている企業も多い傾向があります。

 

需要高まるタイのECサイトの特徴

タイで人気のECサイトは、1位が中国のアリババグループであるLazada Thailand、2位がシンガポールの会社であるShopee Thailand、3位が元々韓国資本で成り立っていた411eStoreとなっています。

 

移動規制の影響もあり、宅配サービスの需要が増え、Lazadaは自社物流以外に国内外の複数の物流会社を活用して、サービスを拡大しています。

アリババグループである百世はとくにタイ国内に宅配サービス拠点を増やしていっています。

「タイのAmazon」と言われるほど国内の人気が高く、生活用品や家電、ファッション雑貨や不動産といった幅広い商品を扱っていることが人気の理由です。決済方法もクレジットカードだけでなく、コンビニやWeb上で支払いができることも利便性が高く、使いやすいと言えます。

Shopee

 

Shoppeは特徴として、Lazadaより扱っている商品が安価なこと、アプリが使いやすいといった点で人気となっていますが、Lazadaの方が国内で一番利用されています。

411eStoreは韓国資本の影響からも、若い女性に人気の韓国コスメなどの美容製品が人気で、上の2社とは利用率の差がありますが、この点は強みとしています。

こうしたサービスは消費者の間で浸透はしているものの、ECが小売市場に占める割合は約 4%程度となっており、10%以上を維持する日本や中国と比べると、まだ伸びしろがあることがわかります。

コロナの影響で需要が拡大していることから、今後もさらに急拡大していく見込みです。

 

このように販売方法などビジネス動向も変わりつつある今、日本企業にとってタイでのビジネスはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

 

タイでのビジネス メリット、デメリット

タイでは日本製品が人気で、日本マーケットが拡大を続けていることや、アジアのハブ拠点として物流環境が良いことなどを理由に、多くの日本企業が進出しています。

また、人件費が日本の約4分の1であることから、事業にかかるコストも安く、日本では利益を出しにくい事業でもタイでは成功させることができるといったケースもよくあります。

 

また、中小企業にとってもタイにビジネス進出する魅力があります。

タイ政府は現在、中所得国から高所得国へと発展させることに力を入れていることが魅力の一つです。

タイランド4.0

政府がタイランド4.0という産業政策を掲げ、経済の中心となる重点産業10種を成長させるために、投資促進を呼びかけています。

その10種とは、次世代自動車、スマートエレクトロニクス、メディカルツーリズム、農業バイオテクノロジー、未来食品、ロボティクス、航空/ロジスティクス、バイオ燃料/化学、デジタル/IT、メディカルハブとなっています。

 

タイ政府首脳と日本の中小機構の高田理事長が対話し、両国の力を合わせて新たなイノベーションをつくり、海外市場を共に開拓していく重要性を確認しました。

また、これを機にタイの首相や副首相もビジネス連携を期待しており、支援も強化していく方針です。

また、日本では中小企業が大企業と取引することは難しいですが、タイでは大企業と取引できる可能性が高く、事業規模の拡大や利益増加にも繋がるため注目点となっています。

こうした理由から冒頭でもお伝えした「タイには中小企業が多い」ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

タイ少子高齢化

メリットがある一方で、デメリットもあります。

その1つは、日本と同じように少子高齢化社会が2年後の2022年には直面することが予想されていることです。今後は、人口減少そしてマーケットの縮小も確実となります。

女性1人あたりの出生率も1.40人となっており、1.43の日本と比べて少ないことから、日本よりも急速に少子高齢化が進むと考えられます。

 

タイの人件費向上

2つめは、経済発展に伴う所得向上により人件費も高騰してきていることです。

最低日給の推移は、過去20年間を10年単位で見てみると、2000年には162バーツ、2010年には206バーツ、今年2020年には336バーツとなっています。

20年間で2倍以上に増えているため、今後の課題としては、人件費高騰の中でいかに生産性を上げるかということが挙げられます。その対策として、タイプラスワンという、タイよりコストの安い近隣国に生産拠点を移す動きが活発化すると考えられています。

 

上記のメリットとデメリット、そしてコロナのこうした状況を踏まえて、タイに進出する、あるいは事業を拡大させていく必要があるのかを見極めのは非常に重要なことになってきます

 

最後に

タイにおけるコロナの現状や、日本企業のビジネスへ影響、今後のメリット、デメリットについてお伝えしてきました。

タイはコロナの影響を受け、GDPを支えていた製品の輸出入や観光業の落ち込みにより、経済が不安定になっています。さらに今後は少子高齢化による人口減少も確実であると想定されており、市場が小さくなるのでという懸念も否めません。

しかし一方で、コロナによって活発化している市場や、タイ政府のバックアップで今後成長していくであろう業界も多数あることも事実です。

こうしたタイ国内の状況をもとに適切な判断をして、ビジネスを遂行させていきましょう。

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