
ビジネスでタイに進出を考えているのであれば、押さえておきたいのはサイアム・モーターズ・グループ(SMG)です。タイ財閥の1つで、自動車産業を中心に大きな影響力を持っています。
本記事ではタイへの進出を検討しているビジネスパーソンに向けて、サイアム・モーターズ・グループの概要や歴史、事業内容を紹介します。
サイアム・モーターズ・グループ(Siam Motors Group)とは

サイアム・モーターズ・グループはアジア各国に影響力を持つタイ財閥の1つです。グループの概要は以下のとおりです。
会社名 | Siam Motors Co., Ltd.(未上場) |
本社 | タイ |
設立 | 1952年 |
創業者 | ターウォン・ ポーンプラパー氏 |
売上高 | 70億米ドル |
グループ企業数 | 69社 |
従業員数 | 23,000人 |
サイアム・モーターズ・グループはタイの自動車産業で最も長い歴史を持つ企業です。現在では、自動車・自動車部品など6つの主要事業を展開し、タイだけではなくアジア各国にも影響力を持っています。
また、タイにおける日産初のディーラーかつ製造会社になるなど、日本企業と関係の深い企業です。日産のほかにも、ダイキン、GSユアサ、日本精工、ヤマハミュージック、日立製作所などの多くの企業と提携しています。
この章ではサイアム・モーターズ・グループの歴史や事業内容、日本企業の協業事例3選を紹介します。
歴史
サイアム・モーターズ・グループの創業者はターウォン・ポーンプラパー氏です。ターウォン・ポーンプラパー氏は中国福建省の出身で、鉄くず業を営む父からビジネスを学びました。そして、旅行で訪問した日本の近代化に感銘し、1940年代にタイで日産自動車の輸入販売を始めます。
1952年にはSiam Motors Co., Ltd.を設立し、タイで唯一の日産車の代理店として成長します。
さらに、1962年には日産自動車組立工場を設立しました。当初、自動車組立工場の従業員は180人で生産能力は1日4台でした。その後事業を拡大し、現在では従業員数23,000人を抱え、全体の売上高が70億米ドル(1兆500億円)にまで成長しています。※1ドル=150円換算
現在は、タイの自動車産業だけではなく、多くの分野でトッププレイヤーとしての地位を築いています。
事業内容
サイアム・モーターズ・グループの主要事業は以下のとおりです。
- 自動車
- 自動車部品
- 建設・産業ソリューション
- ホスピタリティ&ライフスタイル
- 教育
- 投資
上記の6事業の内容や関連企業などについて解説します。
AUTOMOTIVE(自動車)
サイアム・モーターズ・グループは、設立当初から自動車の製造・販売が主要事業です。特に日産自動車との関係が深く、日産と多くの関連会社を設立しています。その一例は以下のとおりです。
- Nissan Trading(日産トレーディング)
自動車部品、原材料、機械、車両のサプライチェーン管理や物流サービスを提供。
- Siam Nissan Sales(サイアム日産セールス)
日産車の販売とアフターサービスの提供。
- Siam Nissan Body(サイアム日産ボディ)
車体の修理サービスを提供。
- Nissan Powertrain (日産パワートレイン)
日産車用エンジンの製造・組立の実施。
長らくタイでは、日本の自動車が圧倒的な人気を誇っていました。しかし、近年は急速に電気自動車の普及が進んでいます。そのため、サイアム・モーターズ・グループは韓国や中国の電気自動車メーカーと提携の動きを活発化しています。
AUTOMOTIVE PARTS(自動車部品)
サイアム・モーターズ・グループの2つ目の主要事業は自動車部品です。自動車部品の関連企業と業務内容は以下のとおりです。
- Bosch Automotive(ボッシュ・オートモーティブ)
自動車部品やブレーキシステム部品の製造・販売。
- GS Yuasa Siam Industry(GSユアサ・サイアムインダストリー)
産業用バッテリーの製造および輸出。
- KYB
KYBブランドのショックアブソーバーの製造・販売。※ショックアブソーバーとは、別名ダンバーと呼ばれる車や二輪車の衝撃を抑える装置のことです。
- NSK Bearings (NSKベアリング)
マレーシアでベアリングを販売。
- MAHLE Siam Filter Systems(MAHLE・サイアム・フィルターシステム)
燃料フィルターやオイルフィルター、プラスチック射出成型部品などの製造。
上記以外にも多くの自動車部品を製造・販売する関連会社があります。
CONSTRUCTION&INDUSTRIAL(建設・産業ソリューション)
サイアム・モーターズ・グループは建設・産業ソリューション事業においても、多くの日本企業と提携しています。
例えば、Bangkok Komatsu Company Limited(バンコクコマツ株式会社)やSiam-Hitachi Elevator(サイアム日立エレベーター)、さらにはSiam Daikin Sales(サイアム・ダイキン・セールス)などです。
バンコクコマツ株式会社では、小型・中型ショベルの製造・輸出を行っています。サイアム日立エレベーターでは、日立エレベーターの製造・輸出を担っています。サイアム・ダイキン・セールスは、ダイキン工業株式会社のエアコンの販売代理店です。サイアム・ダイキン・セールスとダイキン工業株式会社の関係については後述します。
HOSPITALITY & LIFESTYLE(ホスピタリティ&ライフスタイル)
ホスピタリティ&ライフスタイルの事業内容は、ホテルやゴルフリゾートの開発・運営などです。サイアム・モーターズ・グループが管理している代表的なホテルとゴルフリゾートは以下のとおりです。
- Hotel Tropicana Pattaya(ホテル トロピカーナ パタヤ)
- Mövenpick Siam Hotel Na Jomtien Pattaya(モーベンピック サイアム ホテル ナ ジョムティエン パタヤ)
- Siam Country Club Bangkok(サイアムカントリークラブバンコク)
- Siam Country Club Pattaya Old Course(サイアムカントリークラブ パタヤ オールドコース)
EDUCATION(教育)
教育事業では日本のヤマハミュージックと提携しています。関連会社のSiam Music Yamaha(サイアムミュージックヤマハ)は、ヤマハブランドの楽器やオーディオの正規輸入代理店、音楽教室を運営しています。
INVESTMENTS(投資)
投資事業はさらなる成長を目指して、4つの関連会社により不動産賃貸や不動産開発などに戦略的な投資を行っています。
日本企業の協業事例
サイアム・モーターズ・グループは日本企業との関わりが深く、多くの日本企業と提携しています。その中から、代表的な3社の協業事例を紹介します。
日産自動車株式会社

出典:タイ日産自動車
サイアム・モーターズ・グループと最も関係の深い日本企業は、日産自動車株式会社です。創業当初から日産車の輸入販売を行っており、タイでの日産自動車の販売拡大に大きな役割を果たしてきました。現在でもサイアム・モーターズ・グループは、日産の乗用車やピックアップトラックの製造、日産車の輸出入・販売を担っています。
ダイキン工業株式会社

サイアム・モーターズ・グループとダイキン工業株式会社は1982年に提携し、Siam Daikin Sales(サイアム・ダイキン・セールス)を設立しました。サイアム・ダイキン・セールスは、ダイキンのエアコン販売代理店として、住宅・商業・産業用向けのエアコンや空気清浄機などを販売しています。
株式会社日立製作所

株式会社日立製作所は、1974年にサイアム・モーターズ・グループと代理店契約を締結し、タイへ進出した日本企業です。タイのエレベーターやエスカレーターなどの昇降機市場は、年間約6,000台の需要があり、東南アジアの中でも有望視されています。
2019年にはタイ・スワンナプーム国際空港向けに、昇降機各種で計174台の受注に成功し、協業により大きな成功を収めています。
参考:日立「ニュースリリース」
タイ進出ならサイアム・モーターズ・グループと提携しよう
サイアム・モーターズ・グループは、タイで影響力を持つ財閥の1つです。そして、日産自動車をはじめ、日本企業と関係が深いことでも知られています。
タイへの進出を検討しているビジネスパーソンは、サイアム・モーターズ・グループとの提携を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。