世界における水問題とSDGs。世界市場規模 約100兆円の水ビジネスにまつわる事業プレイヤーと日本企業の立ち位置

ASEAN諸国を旅行したことがある方ならご存知と思いますが、川の水はまだどこもきれいと言うにはほど遠いのが実情です。インフラ整備が整わないのは、地下水や河川の水質が悪くなればなるほど上水を作るための手間や費用かさんでくるからです。

蛇口をひねるとすぐに安全な水が出る水道や、学校やビル施設に整備された清潔なトイレは日本では当たり前ですが、このような国は世界でも限られた数しかありません。

国土交通省の調査によると、世界で水道水が飲める国は16ヵ国しかないということが分かっています。

 

ここでは、世界の水事情と水ビジネスについてご紹介します。

 

世界における水問題とSDGs

SDGs

生きていく上で欠かせない安全な水ですが、地球上には十分な真水があるにも関わらず経済の悪化やインフラの不備のため世界の3人に1人は安全な水を利用できない状態となっています。

水不足だけでなく、非衛生的なトイレ環境に起因する疾病により毎年数百万の人々が亡くなっています。SDGsは水道のパイプで管理される水を「安全な水」と定義していますが、安全な飲み水を飲めない人は世界の人口の約3分の1に当たる約22億人、安全に管理されたトイレを使用できない人は約42億人もいるとしています。

この人口は世界の半分以上で、約6割となっています。SDGsは、2030年までに全ての人々が安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスできることを目指しています。

 

水道水が飲める国

国道交通省の調査によると、水道水が飲める国は以下16ヵ国となっています。

 

  • アイスランド
  • フィンランド
  • スゥエーデン
  • ドイツ
  • オーストリア
  • アイルランド
  • スロベニア
  • クロアチア
  • アラブ首長国連邦
  • 南アフリカ
  • モザンビーク
  • ソレト
  • オーストラリア
  • ニュージーランド
  • カナダ
  • 日本

 

米疾病予防管理センターの調査では、水道水が飲める国を少し拡大すると、下記のような国でも水道水が飲めるとしています。

  • 韓国
  • シンガポール
  • イスラエル
  • アメリカ
  • グリーンランド
  • ノルウェー
  • デンマーク
  • スイス
  • スペイン
  • ポルトガル
  • イタリア
  • イギリス
  • フランス
  • ポーランドなど

ASEANではシンガポールのみとなっていますが、これは日本とほぼ同じレベルで上下水道が整備されているからです。

下記のデータを見てみると日本より上下水道の普及率が高いということが分かっています。

水道普及率

※Global Water Intelligence, Global Water Market 2011

 

1人あたりのGDPが5,000 USDを超えているシンガポール以外の国、マレーシア、タイに関しても上水道の普及率が80%以上となっていますが、その他の国に関しては50%以下になっています。その理由は国ごとに特徴があるようです。

 

フィリピン、インドネシア

特に島が多いため離島まで含めた上水道を整備には非常にコストがかかると言われており、このことで整備に遅れが出ています。

 

カンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナム

都市部を中心に経済発展しており、田舎のエリアまで広がるのにはまだ時間がかかる見込みとなっています。

山間部等に行くと道や物流網のインフラでさえ整備されていないエリアも多く存在します。それでも、上水道は比較的重要視されているため経済成長とともに普及率が上昇する傾向にありますが、下水の方は住民の目に見えない部分も多いこともあり普及が遅れています。

 

タイ、インドネシア、フィリピン

上水道の整備に比べて下水道の整備が非常に遅れていることが原因です。

 

海外と日本の飲料水の違い

日本の水道水は沖縄などの一部地域を除いてほとんどが軟水ですが、海外ではエヴィアンやヴォルヴィックのような硬水がスタンダードになっています。硬度が0~100mg/L未満の日本の水に対し海外の水は200~400mg/Lと日本の倍以上の硬度になっています。

日本では水道法により下記のような水質基準が設けられており、基準を守るために200種類以上の検査を定期的に行っています。日本における「良い水」の基準とは、まさに「高い安全性」と言えるでしょう。

水野安全基準

https://www.sarastear.com/blog/b30319/

 

欧米での「良い水」の基準は日本と異なります。特にヨーロッパでは昔から温泉水を飲む習慣があり、ミネラルがいかい健康に良いかを実感しているため、「ミネラル分を一定に保つこと」が重視されています。

そのため、ヨーロッパでは採水した水を殺菌処理などの加工を一切せずにそのままボトリングすることが定められています。

 

急拡大する水ビジネス

世界の水インフラ需要の増加

限りある水資源を最大限活用するにあたり、貯水から排水・再利用までの水利用全体や、水防災を見渡したインフラ整備が重要になっています。世界のインフラ需要のうち、水分野は全体の 3割超とトップを占めています( 2位電力、 3位通信)。

 

 

水ビジネスの世界市場規模:約100兆円越え

世界的な水問題の深刻さが増す中、課題を抱える各国は水インフラ整備を急いでいます。水ビジネス市場の規模は2015年で約84兆円、人口増加や都市化の進展により2020年には100兆円を超えるとの予想されています。(経済産業省の報告では、世界の水ビジネスの市場規模は2007年の約36兆円から2025年では約87兆円と、2.4倍伸びると予測されています。)

昨今、このような水インフラの市場の急成長はビジネスチャンスとして捉えられており、各国の水関連企業と他領域からの新規参入者も加り競争が激化しています。

 

急成長する水ビジネス市場において、事業領域には一般的に下記のような分野があります。

 

  • 上下水道設備
  • 海水の淡水化プラント
  • 工業用水・工業下水設備
  • 再利用水(下水の再生や有効利用)

 

この中で需要があるのが、上下水道分野で、2007年においては市場全体の約90%の32兆円の市場規模とされていました。しかし今後2025年には市場全体の約85%である74兆円の規模が見込まれるほど拡大していくようです。

地域別で見てみると今後、南アジア、中東・北アフリカが年間10%以上の成長するとされ、国別では中国、サウジアラビア、インドが有望です。市場規模で見てみると、東アジア・大洋州が、北米・西欧市場を今後20年の間に抜くと予測されています。

 

世界における水ビジネス動向

急成長する水ビジネス市場では、「水メジャー」と呼ばれる大手企業が勢力を広げています。一方、他の領域からの新たな企業参入も相次いでおり、国家を巻き込み拡大する水ビジネスの動向が注目されています。

 

現在、世界の水ビジネス市場でプレゼンスを示す大手企業は、仏のSuezグループ、Veoliaなどがあります。これらの大手企業の強みとして、施設の設計・建設、施設の運営管理から経営まで、水に関わる全ての業務を一貫して行う点、ヨーロッパでの水道民営化の歴史において長年蓄積してきたノウハウを持っている点が挙げられます。

しかし、世界市場におけるシェアは2001年頃の7~8割から、現在では3割程度まで減少しています。これら大手の水メジャー企業以外では、アメリカのGEや、ドイツのSiemensも水ビジネスに参入しています。

アジアでは、シンガポールのHyflux、韓国のK-ウォーターや斗山社等の新興企業が勢力を上げており、参入をめぐる企業間競争は激しさを増しています。

 

水メジャー企業

それでは主な水メジャー企業、見ずビジネスに参入する新興企業を簡単にご紹介します。

水ビジネスプレイヤー

 

世界大手4社

Veolia Environnement

フランス本社の総合環境サービス企業で、エネルギー、公共輸送、廃棄物といった複数の事業部門から成り立っています。

水道事業はVeolia Waterが担い、全世界で1億7,000万人に上下水サービスを提供しています

veolia

 

Suez Environnement

フランス本社の企業で、水道事業と廃棄物事業を展開。世界120か国で9,200万人に上水サービスを6500万人に下水サービスを提供し、子会社には水処理事業を中心とするDegremont、米国水道事業を行うUnited Waterなどがあります

 

GE(General Electric Company)

米国籍の世界最大級のコングロマリット企業で、エネルギー、産業用機器、金融、医療機器など幅広い事業を展開しています。水事業は、2000年代前半に複数の関連会社を買収することで急成長を続けています。

水部門はGE Power & WaterのGE Water & Process Technologiesによって運営されています

 

SIEMENS

Simensはドイツのミュンヘンに本社を置く、GEと並ぶ超巨大コングロマリット企業です。2004年にVeolia EnviornnementよりUS Filterを買収することで本格的に水ビジネスに参入し、その後も複数の企業買収を重ねて水事業の拡大を図ってきたものの2013年の事業再編によって水事業は縮小されています。

 

その他

Hyflux

1989年に創設されたシンガポール本社の水処理企業で、シンガポール証券取引所に上場しています。

海水淡水化などの水処理設備の建設のみならず運営・管理も行い、シンガポール以外では中国、中東、アフリカでプレゼンスを強化しています。

 

TaKaDu

本社をイスラエルに置き、イギリスとオーストラリアに支社を置く企業です。

水道ユーティリティに対し、メーターの故障などの不具合や水道ネットワークの破断などの欠陥をリアルタイムで検知して警報するSaaS(software as a service)ソリューションを提供。

損失水の低減などに寄与し、これによって顧客はコスト削減が可能となります。

 

Manila Water

マニラウォーターはフィリピンの上下水道運営会社で、現地の財閥Ayalaグループと三菱商事による共同出資を受け1997年に設立されました。マニラ首都圏において無収水対策、24時間給水を徹底し好業績を上げている。

最近では周辺国であるベトナム、インドネシア、ミャンマーにも進出しています。

 

ACCIONA Agua

インフラや建設業などを手掛けるコングロマリット企業ACCIONAの一部門であるアクシオナ・アグアはスペインのマドリッドに本社を置いています。ACCIONA Aguaは各種水処理プラントの設計から運営まで行いますが、特に淡水化事業に強みを有しています。

スペイン以外では、中南米、オーストラリアなどに進出しています

 

IDE Technologies

イスラエルで最大級のエネルギー・インフラ企業のDelek GroupとIsrael Chemicals Ltd.の半々の出資によって1965に設立されました。淡水化や工業用廃水処理プラント設計を主軸とし、調達から運営を手掛けています。中国、インド、米国、カナリア諸島支社を持っており、海外比率は80%超です。

 

VA Tech Wabag

水処理プラント建設分野におけるインド最大のエンジニアリング企業です。インド東部のチェンナイに本社を置き、近年ではアフリカでも水ビジネスを拡大しており、M&Aにも積極的な姿勢を示しています

 

Kemira

フィンランドのヘルシンキに本社を置くケミラは、化学品メーカーです。1920年に設立されました。9割近くが欧州での売上で、2013年に発表された同社の企業戦略で、「紙・パルプ」、「鉱業」、「石油・ガス」、「水処理」の4つの分野に集中していくことを表明しています

 

Grundfos

デンマークに本社を置くグルンドフォスは、世界最大手のポンプ・メーカーです。近年では水処理分野にも進出開始し、2013年、Hyfluxの膜製造部門と提携しています。途上国での水供給サービスの一環として“AQtap”という装置を開発しました

 

日本の立ち位置

現在、海外の水ビジネス市場規模は約7.5兆円とされていますが、日本企業の売り上げは1000億円強しかないほど、国際競争力に欠けています。

今後、人口増加に比例して深刻な水不足による上下水道の需要増、新興国の工業化・経済発展による工業用水の需要増によってこの市場は2025年までに110兆円までに膨らむという試算もある中、日本はどのようにして世界市場に乗り出していくのでしょうか。

 

日本の水ビジネス企業は、部材や部品、海水淡水化や排水・下水再利用などの技術面において優れた競争力を持っていますが、世界的水メジャー企業のようにプロジェクト全体の運営・管理までを一貫して行うサービスを持っていません。

しかし、海水の淡水化に欠かせないハイテク膜処理や、漏水防止、浄水場・施設の維持管理のノウハウにおいて日本は世界一とされており、海外からの評価は高いようです。

そのため、経済産業省は官民一体となって取り組み、今後国内の水関連ビジネスが世界シェア6%を獲得することを目指しています。

 

水関連ビジネスの主な企業

【水処理機器関連企業】

旭化成、荏原製作所、クラレ、クボタ

 

【エンジニアリング企業】

メタウォーター、JFEエンジニアリング、日立製作所など、

 

【総合商社】

伊藤忠商事、住友商事、三菱商事など

 

 

日本企業の優位性

世界各国の企業と比べて高い技術力があり、水を磨く三次処理、漏水防止、下水道汚泥の資源化、海水淡水化技術なども世界レベルです。

 

日本企業の問題点

日本企業

http://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_files/inter_03/5/notes/ja/05yoshimura.pdf

日本は他国に比べてコストが高いのがマイナス面になっています。

グローバルウォータ・ジャパン代表の吉村氏は「発展途上国の現地のニーズは安くてそこそこの商品である。それに対して日本の技術は他国にとってはオーバースペックである。」と日本の水サービスのコスト高の課題を指摘しています。

 

国際競争力を持つために

高い技術力を持つ日本企業が世界進出して海外企業と肩を並べるためには、現地の人材のニーズを的確につかんで、そのニーズに合わせた適切な価格でサービス提供する必要があります。

これまでの日本の水ビジネス企業は、海外の上下水道の施設を建てた後はすぐに退却しており、その後の維持管理オペレーションを水メジャー企業に奪われていました。低コストの水サービスを提供するためには、水源から蛇口までトータルでシステム提案ができることも必要になってきます。

 

最後に

フランスや韓国の大統領は自らがセールスマンとなり国際的な水ビジネスのロビー活動を行っています。

日本が水メジャーのシェアを奪うために、官民との協力関係を強化して世界に乗り出すことが重要になってくるでしょう。

 

<参考>

https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/sustainable_development_goals/water_and_sanitation/

https://water-business.jp/?region=us

https://www.kankyo-business.jp/column/024783.php

https://www.projectdesign.jp/201408/water/001510.php

https://www.jftc.or.jp/shosha/activity/now/water/detail.html

http://www.mizu.gr.jp/images/main/archives/forum/2010/forum2010_nakamura.pdf

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2017/1d448b64e88727a2/jp-waterbiz201712.pdf

https://doda.jp/engineer/mono/guide/002/005.html#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AF%E3%80%81%E6%97%AD%E5%8C%96%E6%88%90%E3%80%81%E8%8D%8F%E5%8E%9F,%E3%81%AB%E5%8F%82%E5%85%A5%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 

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