ヨーロッパ(イギリス・ドイツ)の家電需要から気づかされた企業体制のあり方

今回は、日本企業が海外へ進出する際にポイントとなり得る点について、イギリスとドイツへの出張経験を元にお伝えいたします。

イギリスから見た日本製品へのイメージ

イギリスでは、家電量販店に行き、時計売場を見て回る機会がありました。
販売されている商品の中では最も、アメリカブランドの「Fitbit」が人気のようでした。

Fitbitは、アクティビティ、エクササイズ、睡眠の記録から生活をサポートすることのできる時計で、その機能性とスリムなデザインが人気の秘密のようです。

他には中国のHuaweiや韓国のサムスン製の商品も、デザインが革新的であったり、おしゃれであることから人気の高さが伺えました。しかし、残念ながら日本製品はほとんど見られませんでした。

その理由をイギリスの人々に尋ねてみたところ、まず、日本製品に対して高品質なイメージはないということでした。また、デザインや価格を考えてもコストパフォーマンスは中国製品の方がよく、IoTデバイスなどの「モノ」がインターネットを通じてクラウドやサーバーに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組みのことの観点から見ても、日本製品は使い勝手がいいというイメージはないとのことでした。

日本とヨーロッパという、距離が離れているリスクがあるとは言え、現地のニーズを把握しないまま製品開発を行っているのでは、とも言われてしまい、日本製品の認知度の低さに私はショックを受けました。

時計売り場の様子

時計売り場の様子

人気の「fitbit」
人気の「fitbit」が並ぶ

人気の「fitbit」が並ぶ

初体験の「Airbnb」でも現地調査を

今回の出張では初めて、「Airbnb」を利用しました。
「Airbnb」とは、シェアリングエコノミーサービスの一つで、「空部屋や家を貸したい人」と「宿泊スペースを借りたい人」とのマッチングサイトです。これを使って、今回は、イギリスとドイツで1週間ずつ現地のお宅に宿泊させていただく、いわゆる「民泊」を体験してきました。

一般的なホテルに宿泊するよりも宿泊費は抑えられますが、手配をすること自体も初めてでしたので、実際に宿泊するまでは多少の不安がありました。しかし、現地の人々がどのような暮らしをしているのかを見られる機会にもなる、とも思い、前向きに捉えることにしました。

その中でも特に、どのような家電を使っているのかについて注目をしていたのですが、ここでも日系のメーカーを目にすることはありませんでした。

イギリスのキッチンの様子

イギリスのキッチンの様子

イギリスのキッチンの様子
ドイツのキッチンの様子

ドイツのキッチンの様子

実際の居住空間を見せてもらい、現地の人たちと話をしていく中で、イギリスとドイツ、それぞれの国の人々が家電に求めるポイントを把握することができました。

まず、イギリスの住居では、限られた空間をどう活かすか、また製品の耐久性がポイントとなり、そのような機能性とデザイン性を家電に対しても求める傾向にあると思いました。

また、ドイツでは、デザインや機能性よりも環境に配慮した製品が重視される傾向にありました。
例えば掃除機では、プラスチック製のものよりもアルミ製のものの方が環境に良いことから、たとえアルミ製の商品がプラスチック製品より重量があったとしても、昔から馴染みのある、環境に配慮されたアルミ製の商品が選ばれていました。

ヨーロッパ家電メーカーのマネジメント手法

今回の出張では、ヨーロッパの家電メーカーも訪問しました。
その会社では、スタッフから新商品につながるアイデアがしっかりと出るようにと、オフィスの立地環境に配慮していたり、アイデアが採用されないことでスタッフのモチベーションを削ぐことのないよう、上に立つ人がどんどんアイデアを吸い上げていくようなマネジメント体制に力を入れていることを知りました。

トップのコミュニケーションの取り方による弊害

海外進出している日本企業では、海外拠点のトップを日本人が務めている組織体系が多いようにも思います。
そのようなトップの方々の中には、挨拶や雑談などのコミュニケーションを現地スタッフと取らず、食事はパーティーなどで日本人同士のみの会話に終始してしまっている方も少なからずいらっしゃるというお話を聞くことがあります。しかし、それでは現地の人でしか分からない情報や文化を知るチャンスを失ってしまいますし、現地スタッフもトップの名前すら知らないという状況になり、トップへの信頼感は築かれません。

一方で、現地スタッフともしっかりとコミュニケーションを取り、例えば、東南アジアなどでは現地の屋台で食事をするなどして、自分たちが進出する市場をしっかり見ていらっしゃるトップの方がいらっしゃることも確かです。

どちらの会社が市場のニーズをつかめるかは、一目瞭然です。トップに立つ人が、現場に意識を合わせ、できるだけ多くの現場の声を吸い上げていく必要があるのではないでしょうか。

 
海外へ企業進出をする場合、日本の組織体系やマネジメント手法がそのまま通用することはまずありません。マネジメント体制やコミュニケーションの取り方などを現地の常識と擦り合わせ、現地に権限移譲しながら、より生産性の高くなる仕事の進め方を確立していく過程が必要なのではないでしょうか。

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