
SMグループはフィリピン財閥の一つです。創業者のヘンリー・シー氏が一代で築き上げたコングロマリットで、同グループの持株会社「SMインベストメンツ」を中心に小売事業や不動産開発事業、銀行業、投資事業などを展開しています。本記事ではSMグループの歴史や理念、主要事業をわかりやすく解説します。
フィリピン財閥のSMグループとは

出典:SMインベストメンツ
SMグループは、フィリピン国内で強い影響力を持つ最大級の財閥です。実際に、フィリピンの時価総額ランキングの1位から3位までをSMグループのグループ企業が独占しています。この章では、SMグループの歴史と理念を解説します。
参考:CebuTrip「フィリピン経済|フィリピンの財閥企業・富豪ランキング 2024」
歴史
SMグループの歴史は、1958年に中国出身のヘンリー・シー氏がフィリピンのマニラで、靴店「シューマート(ShoeMart)」をオープンしたことが始まりです。この「シューマート」の頭文字が、現在の「SMグループ」の名前の由来となりました。
その後、1972年に、フィリピン初のデパート「SMキアポ」をオープン。1985年には、フィリピン最大級のショッピングモール「SMシティ・ノースEDSA」を開業し、小売業の分野で大きな成功を収めました。さらに、金融業や不動産開発事業にも進出し、SMグループはフィリピンを代表するコングロマリットへと成長しました。
創業者のヘンリー・シー氏は「フィリピン小売業界の父」と呼ばれた人物です。2019年に94歳で他界するまで、10年以上にわたりフィリピン長者番付のトップに君臨していました。
SMグループは、2021年にフィリピン最大手物流企業を買収するなど、創業者を失った後も事業規模の拡大を続けています。
理念
SMグループは65年以上にわたって、顧客へのサービス提供を事業の中心としてきました。そして、「サービスを提供するコミュニティの成長を促進し、持続可能なビジネスのシステムを構築する」をビジョンに掲げ、その実現に向けて次の5つの価値観を重視しています。
・意欲と熱意
物事を成し遂げ、実現させる。
・リーダーシップ
常により広い利益を考慮し、物事をより良くする。
・誠実さ
たとえ誰も見ていなくても、正しいことをする。
・チームワーク
同一の価値観に基づいて、チームとして働く。
・起業家精神
解決すべき問題を見つけ、そこに新たな機会を生み出す。
SMグループは、これらの価値観を全員で共有し、顧客に最高の体験を提供することを目指しています。
SMインベストメンツとは
SMグループの主要企業は、持株会社のSMインベストメンツです。この章ではSMグループの事業規模を把握できるように、SMインベストメンツの会社概要や経営状況を紹介します。
SMインベストメンツの会社概要
SMインベストメンツの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | SM Investments Corporation |
本社 | フィリピン |
設立 | 1958年 |
従業員 | 130,997人(2023年度) |
売上高 | 6,163億フィリピンペソ (2023年度) |
SMインベストメンツの経営状況
SMインベストメンツの経営状況として、直近6年間の売上高と純利益の推移を紹介します。

参考:SMインベストメンツ「Investors」
2023年度の売上高は6,163億フィリピンペソ(1兆5,408億円)で、2022年度の5,538億フィリピンペソ(1兆3,845億円)と比較して、625億フィリピンペソ(1,563億円)増加しました。また、2023年度の純利益は770億フィリピンペソ(1,925億円)で、2022年度の617億フィリピンペソ(1,543億円)と比較して、153億フィリピンペソ(383億円)増加しました。2023年度の売上高と純利益は過去最高を達成しており、その要因はファッションや飲食、エンターテイメントなどの需要増加が挙げられます。
※1フィリピンペソ=2.5円換算
SMグループの主要事業
SMグループの主要事業は次のとおりです。
- SM RETAIL(小売事業)
- SM PRIME(不動産開発事業)
- BDO(銀行業)
- Chinabank(大手総合銀行)
- Portfolio Investments(投資事業)
これらの事業内容について解説します。
SM RETAIL(小売事業)
SM RETAILは、SMグループの原点である「シューマート」から発展した小売事業です。現在、SMストアやSMスーパーマーケット、アルファマート、専門店など、複数のブランドで合計4,100店舗を運営しています。また、1年間で419店舗を新規オープンするなど、SMグループの中核を担う事業として成長を続けています。
SM PRIME(不動産開発事業)
SM PRIMEは、ショッピングモールや住宅、オフィス、ホテルなどの不動産開発事業です。同事業では、フィリピンに86棟のショッピングモール、10棟のホテル、18棟のオフィスビルに加えて、中国に8棟のショッピングモールを所有しています。
BDO(銀行業)
BDOは、SMグループの銀行業です。全国に1,700以上の支店を持つフィリピン最大の銀行で、ローンや預金、運用資産、保険、デジタルバンキングなどを展開しています。また、海外オフィスが20拠点あり、グローバルなニーズにも対応しています。
Chinabank(大手総合銀行)
Chinabank(チャイナバンク)は100年以上の歴史を持つ、フィリピン初の民間商業銀行です。設立当初は中国系フィリピン人のビジネスパーソンのニーズに応えていました。現在では、全国648の支店を展開するフィリピンの大手総合銀行に成長しています。
Portfolio Investments(投資事業)
Portfolio Investmentsは物流や再生可能エネルギー分野など、高成長事業への投資を行う事業です。同事業で、SMグループに収益をもたらすパートナーを探すことです。これまでに投資した実績として、次のような事業があります。
・2GOグループ(2GO Group, Inc.)
2GOグループはフィリピンの物流会社です。旅客・貨物輸送サービスを展開しており、フィリピン全土での商品や人の移動を可能にしています。SMグループは、2021年6月に2GOグループの過半数の株式を取得し、子会社化しています。
・ベル・コーポレーション(Belle Corporation)
ベル・コーポレーションは、高級レジャー市場における不動産開発を行う企業です。リゾートやレジャー施設の開発を行っています。
SMグループを参考にフィリピンへ進出しよう
SMグループは、1958年に靴店「シューマート」から始まり、現在では小売事業や不動産開発事業、銀行業、投資事業などを展開しています。小売事業のSM RETAILは全国で4,100店舗を運営し、不動産事業は大型ショッピングモールを所有しています。このように、SMグループは顧客のニーズを的確に捉え、事業を多角化することで成長を遂げてきました。
フィリピン進出を検討している経営者様は、SMグループのビジネスモデルを参考にしてみてはいかがでしょうか。