タイ財閥のTCPグループとは?概要や歴史、主要企業を紹介

タイは、東南アジアのハブとして注目を集めています。実際に、日清食品ホールディングス株式会社やホンダ技研工業株式会社など、多くの日本企業がタイに拠点を構えています。 

さらに、世界銀行の予測によると、2025年のタイのGDP成長率は2.9%です。2024年は2.6%であったため、タイ経済が活性化していると言えます。 

このような背景を踏まえ、タイ進出を検討しているビジネスパーソンもいらっしゃるでしょう。そこで本記事では、タイ経済に大きな影響力を持つ財閥「TCPグループ」の概要や歴史、主要企業について紹介します。 

参考:JETRO「世界銀行がタイ経済モニターを公表、中小企業などの生産性向上が必要」 

TCPグループとは 

出典:TCPグループ 

TCPグループは、エナジードリンク「レッドブル」の製造・販売を中核事業とするタイ財閥です。アジア地域に5つの工場を構え、5,100人を超える従業員を雇用しています。グループ全体の年間売上高は、100億バーツを超えているとのことです。ここでは、TCPグループの基礎知識として、歴史や企業理念を紹介します。 

歴史 

TCPグループの歴史は、創業者の中国系タイ人のチャリアオ・ユーウィッタヤー氏が1956年に、バンコクで製薬会社を設立したことから始まりました。その後、自社工場を開設し、「TCマイシン」ブランドで解熱剤や抗生物質、点眼薬などの新薬を開発しました。 

1967年からは、エナジードリンク市場に着目し、それから間もなく「レッドブル」を開発。「レッドブル」はタクシー用ライトボックスで宣伝したことが功を奏して、タイ国内で人気が拡大しました。 

1977年からは、製造・輸出を担う新会社を設立し、シンガポールへ初の輸出を開始。その後、オーストリア人実業家で同社のビジネスパートナーであるディートリッヒ・マテシッツ氏と共同で、オーストリアにレッドブル株式会社を設立しました。 

1996年、日本の最新自動販売機技術をタイに導入し、主要な工業団地に自動販売機を設置しました。近年はミャンマーや中国にオフィスを開設するなど、東南アジアを中心に海外進出を進めています。 

企業理念 

エナジードリンクの伝統と、「誰もが、どこにいても、この世界に良い影響を与えたい」という願いがTCPグループの日々のインスピレーションにつながっています。また、「現代社会において、人が自分の夢や目標を追いかけ、より良い社会や地球環境の実現に貢献するには、心身のエネルギーと爽快感が欠かせない。」と考えており、そのエネルギーや爽快感を提供することがTCPグループのパーパス(目的)です。 

そして、TCPグループはパーパスを実現するために次の3つの価値観を重視しています。 

  • 充実 

高品質な製品とサービスを通じて、消費者やパートナーのニーズを満たす。 

  • 成長 

サプライチェーン全体を通じてブランド価値を高め、パートナーに新たな価値を提供する。 

  • 思いやり 

全ての業務プロセスにおいて持続可能な方針を貫き、社会と環境に配慮する。 

TCPグループの主要企業 

TCPグループの全容を把握するために、ここでは5つの主要企業と事業内容を紹介します。 

T.C. Pharmaceutical Industries Company Limited 

出典:T.C. Pharmaceutical Industries Company Limited 

T.C. Pharmaceutical Industries Company Limited(TCファーマシューティカル・インダストリー)は、1978年に食品・飲料の製造・輸出企業として設立されました。エナジードリンクの「レッドブル」のフレーバーを製造・輸出する唯一の企業です。また同社では、飲料の製造・流通に関する包括的なOEMサービスを提供しています。現在はエナジードリンクに機能性ドリンク、ジュース、スナックなどをアジア13カ国に展開しています。 

T.G. Vending and Showcase Industries Co., Ltd. 

出典:T.G. Vending and Showcase Industries Co., Ltd. 

T.G. Vending and Showcase Industries Co., Ltd.(TGベンディング・アンド・ショーケース・インダストリー)は自動販売機による缶や瓶飲料の小売企業です。1996年に設立され、29年以上の実績があります。炭酸飲料、ジュース、コーヒー、紅茶など、あらゆる飲料の自動販売機サービスを専門としています。 

同社が使用している自動販売機は、全て日本から輸入されている点が特徴です。現在では、タイ全国70県に展開し、工場、ホテル、学校、官公庁、百貨店など、2,000カ所以上のキオスクに自動販売機を設置しています。 

Durbell Co., Ltd. 

出典:Durbell Co., Ltd. 

Durbell Co., Ltd.(ダーベル)は、タイ全国に物流サービスと倉庫サービスを展開する流通業者です。22年以上の歴史があり、現在は消費財の販売、流通、倉庫管理においてタイ有数の企業として地位を築いています。タイ全国に配送ネットワークを構築しており、48時間以内の配送を実現しています。 

Hi-Gear Co., Ltd. 

出典:Hi-Gear Co., Ltd. 

Hi-Gear Co., Ltd.(ハイギア)は、販売促進活動サービスを提供するマーケティング企業です。製品発表やプロモーション、合同イベントなどの企画・運営といったサービスを展開しています。 

TCP Incubator Co., Ltd. 

出典:TCP Incubator Co., Ltd. 

TCP Incubator Co., Ltd.(TCPインキュベータ)は、食品・飲料業界における革新的なビジネスや製品の創出を目的に設立された企業です。起業家やスタートアップ企業と連携し、業界全体のイノベーションの加速を目指しています。 

TCPインキュベータでは、初期段階のスタートアップ企業に対してシード資金を提供するとともに、製品の商業化や事業拡大に向けたトレーニング、専門知識、ツールを提供。このように、企業家がアイデアを実現するための支援を行っています。 

TCPグループは中国での事業を拡大中 

TCPグループは、1993年に海南省にレッドブル初の工場を設立して以来、中国市場での事業拡大に注力しています。実際に、過去5年間で約43.6億元を投資してきました。そのような施策が功を奏し、レッドブルは中国でも人気を獲得しています。 

また、中国の事業拡大の取り組みの一環として、2023年には四川省に年間14億4,000万本の生産能力を誇る工場を稼働させました。さらに2025年初頭には広西チワン族自治区に新たな生産工場を稼働させる予定です。TCPグループのCEO(最高経営責任者)であるサラブート・ヨーヴィディヤ氏は、今後も中国市場に高品質な製品を提供し、同国への投資を拡大することを表明しています。 

TCPグループの動向に注目しよう 

TCPグループは、エナジードリンク「レッドブル」の製造・販売を手がけるタイ財閥です。現在、同グループは成長戦略の一環として中国市場を重視しており、今後も積極的に投資を拡大していく方針です。東南アジアがビジネスハブとして注目される中、こうした動きは、タイをはじめとしたアジア地域への進出を検討する日本企業にとっても大きなヒントとなるでしょう。 

また、他のタイ財閥についても知りたい方は、「タイ事業を考えるうえで重要なタイ財閥系企業(CP、TCC、TUF)」の記事もぜひご覧ください。 

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