コロナ禍で伸長するペットテック市場。飼い主の新たなニーズと技術革新とは?

家族であり日々を癒してくれるペット。飼っている方も多いのではないでしょうか?大切な仲間として、日々のお世話を自分でしっかりしてあげたいのは山々ですが、仕事の忙しさや、急に具合が悪 くなることもありますし、たまには何もしたくないなんて日もありますよね。さらに個人では難しい健康管理の心配もあります。

犬とパソコン

そんな時に手助けしてくれるのが、ペットテック技術。日本でも少しずつ広がるこのペットテックは、世界でも拡大を見せています。

ペットテックとは

日本では勿論のこと、世界中のあらゆる地域でさまざまな種類のペットが飼われています 。ペットの種類によってお世話の内容が異なり、容易にお世話が可能な種類から手間がかかる種類までさまざま。特に犬は猫に比べて寂しい思いをし、ストレスを抱えてしまうことがあるので日々のケアはとても重要です 。

IoT技術を駆使した製品が人気

最新のペットテック商品はデジタル技術やIoT技術、どこにいても操作が可能なスマートフォンなどのデバイスを活用し、ペットケアの手助けをしてくれます。ペットのお世話の手助けのみならず、ペットの健康や日常の管理の手助けをしてくれる商品も発売されています。

ウェアラブルデバイス系の製品

中でも人気度が高い商品は、IoT技術を用い、ペットの首輪などに装着して使用する「ウェアラブルデバイス」。

  • GPSでペットの位置が分かる
  • ペットが外に逃げてしまったときにメールやアラームで知らせてくれる
  • 夜の散歩の際被視認性が上がるLEDライトがついている
  • ペットの活動量がスマートフォン上に表示される
  • 行動パターンを監視し健康状態を測ることができる

など多様な機能があります。専門的な知識が少ない飼い主でもペットの健康状態を手軽に管理でき、さらに自宅のWi-Fi、スマートフォンに連動するだけで利用できる便利さにより、利用率が拡大しています。

見守りを行う製品

自宅に設置したカメラとスマートフォンでペットの様子を見ることが可能な見守りカメラも人気の商品です。

  • カメラ位置を縦横に360°回転することが可能
  • 動画のみならず音声もスマートフォンから聞くことができる
  • 通話ができペットに飼い主の音声を聞かせることができる
  • 鳴き声を感知しお知らせしてくれる
  • 緊急事態の通知が可能

など、こちらも様々な機能があります。一人暮らしをしていて、仕事中や外出中ペットが心配な場合や、老犬などの介護の見守りとして購入するケースが多くなっています。

自動給餌を行う製品も

そして、自動で餌の補充が可能な自動給餌器も存在します。これもIoT技術で、外出先からもスマートフォンで餌を与える操作が可能な製品や、餌の分量を決められるもの、スケジュールを入力し、その時間に給餌してくれるもの、タイマー式のもの、飼い主の声を録音し再生できるものなどさまざまな機能が付加されていします。外出していない場合でも、タイマーがセットされていれば餌の与え忘れを防止することができますよね。

ペットテック製品にはIoT技術を使用し、どこにいてもペットの管理が可能なものが多く、飼い主だけではなく、ペット自身にもよいことが多いのです。

iot

日本におけるペットテックトレンド

日本のペット関連市場は毎年少しずつ増加しており、近年では毎年平均101%の伸び率を示しています。2019年度の値は、約1兆5700億円で、伸び率は、前年比約102%。これは日本のスポーツ用品市場とほぼ同様の規模です 。2020年度には新型コロナウイルス蔓延の影響で在宅時間が増加し、ペットとの時間もそれに合わせて増加したことにより伸び率が若干上昇し、前年比約103%増加の約1兆6200億円となっています。そしてこのペット市場は今後さらに拡大すると予想されています。

代表的なペットである犬と猫の日本の飼育頭数は、犬は2016年から若干減少傾向。猫は増減があるものの、平均してほぼ一定の飼育頭数となっています。

その中でペット関連市場が 伸びている要因は、飼い主の高級ペット用品志向や、今までになかった新製品の発売、そして、ペットテック技術による製品の販売が後押ししているような形です。

Furbo

日本でも見守りカメラは手軽に利用可能で、多くのペット飼育者から注目されています。特に人気があるのは、テレビや雑誌でも取り上げられることの多い見守りカメラ「Furbo」。これはインテリアにもマッチする外観で、スマホと連動し、ペットの様子をHD高画質で確認可能。さらに、暗闇での赤外線暗視機能、吠えたときの自動検知と通知機能、双方通話機能、おやつを収納することが可能で、スマートフォンからの操作でおやつを与えることができる機能も付属されています。

そして次にウェアラブルデバイスや健康管理系のペットテック商品もペットの健康寿命に大きく影響するため、注目を浴びています。健康系のペットテック製品の中でも、人気があるのが猫用のスマートトイレ。猫がかかりやすい病気として腎不全の割合が多く、尿の回数や量で健康状態をチェックすることが重要となります。他にも、このスマートトイレはトイレを使用する際に同時に体重を計測したり、多頭飼いの猫を識別するためのデバイスが付属されているものもあり、もちろんスマートフォンのアプリで管理が可能です。

CATLINK

中でも中国で開発された猫用の健康管理機能付きスマートトイレ「CATLINK」(キャットリンク)は中国をはじめ、日本でも購入可能で、脚光を浴びています。販売元の「上海联宠智能科技有限公司」(Shanghai Lianpet Intelligent Technology)は、張暁林によって2017年に設立されたばかりのスタートアップ企業です。

このスマートトイレは屋根付きのボックス型のトイレになっており、排泄物を別のタンクへ自動で取り除く機能がついています。そのタンクが いっぱいになった際のお知らせ機能も完備されています。 それぞれの猫の体重をもとにした個体識別機能、利用した回数を固体別に検知し、同時に体重を計測してくれる機能も備わっています。それらの情報はスマートフォンへ送信され、CATLINK専用アプリで管理画面を確認することが可能です。また トイレ利用時の通知の際、登録した猫の名前と体重、利用時間を送信するように設定することも 可能です。これは常に猫砂がきれいな状態に自動で保てる上、健康管理も可能な優れものです。

管理がなかなか難しいペットの日々の健康や、年老いたペットの介護状況などもスマートフォン連動で管理することができるため、需要が高まっているようです。

このようにさまざまな種類のペットテック商品が存在しますが、世界のペットテックのトレンドはどのような状況なのでしょうか?

世界のトレンド、サービス

アメリカにおけるペットテック

犬と車

海外でもペット関連商品の市場は拡大を続けています。中でもアメリカは世界最大のペット市場で、2020年に約10兆円の規模。そしてさらに年々拡大し続けている 状況です。

南北アメリカでは特にペットの自動給餌器が人気があり、単に餌を与える手間が減るだけでなく、設定された量を自動で餌を与えることにより、ダイエットや食べ過ぎ防止などの健康管理が合わせてできるということで注目を集めています。

そして犬のトレーニングに使用する「Shock Collar」(ショックカラー)という商品も人気を集めています。これはトレーニングのため、首輪に合図を出す装置が備わっており、その合図により犬を訓練することができる装置です。ショックという名前がついていますが、実際にショックを与えるわけではなく、バイブレーションやビープ音などで合図を伝達するので安心して使用可能で、無線機を使用した商品は以前から販売されていました。現在ではIoT技術でスマートフォンから使用可能な商品も増加してきています。

さらに、アメリカの一軒家には多く備え付けられているペットドアというものがあります。ペットが出入りしやすい家の壁下方に穴をあけ、内外から侵入可能なフリップ式ドアを設置し、ペットが家の中と外を自由に出入りすることができるようになるドアのことです。日本でも設置しているペット愛好家もいますよね。ドアの部分はペットが頭で押し開ける形なので、負担がかからないよう軽い素材で、厚手のビニール製のものやプラスチックのものが多くなっています。

しかしながらしっかりとフリップが固定されているわけではないので、枠とフリップの間にはどうしても隙間ができてしまいます。そこから隙間風が入り込んだり、害虫やネズミなどが侵入してくる恐れもあります。

しかしペットテック技術が使用されたペットドアでは、隙間のないしっかりとした自動ドアを設置可能です。そしてペットにセンサーを取り付けておけば、ペットが近づくとドアを自動で開閉することができます。もちろんスマートフォンに連動している商品もあり、出入りの時刻の記録、外に出たまま家に入ってこないときやドアが開かないときなどの状況も通知してくれます。

さらに、自動でペットのストレスを解消してくれる商品も存在します。この商品はレーザーポインターを使用し、デバイスから光を照射します。犬や猫はそのレーザーの光が床や壁などに映し出され、その光を動くおもちゃのように追いかけ遊ぶことにより運動し、ストレスを解消することが可能です。この商品もタイミングやスケジュールなどスマートフォンから操作することができます。

現在のアメリカでは実際に多くのペットテック技術を使用した製品が発売され、導入している家庭も多数存在しています。

その他、ペットテック関連では「ペットシッター検索サービス」も見逃せません。アメリカでは昔から散歩の代行を依頼する文化があり、現在ではスマートフォンのアプリ上でその代行者を探すことができるのです。有名ななのが、「Rover」(ローバー)というサービス。この会社は、2011年にアメリカのシアトルで設立されました。このサービスは、アプリを使用して代行者を検索し、もちろん散歩だけではなく毎日のお世話、宿泊先など、さまざまな作業カテゴリーにより選択し代行してもらうことが可能です。

アメリカではこれら以外にもさまざまなペットテック商品が存在しますが、トレンドの中心は、訓練を始め、お世話の手間を省くことが可能な商品となっています。広大な土地を活かし、多頭飼いも増加しているため、より快適なペットとの生活を目指し、これからも販売が伸びる予想がされているため、大変注目されているマーケットとなっています。

中国におけるペットテック

猫とパソコン

中国でのペット関連市場規模は約2兆8000億円の巨大市場です 。経済成長を背景にペットの飼育が増加し、10年で約15倍の規模に膨れ上がっています。ペットの数も2013年に約3億9000万匹から、2017年の約7億5500万匹へと倍増し、さらに現在でも増加傾向にあります。世帯数別で表すと約7500万世帯がペットを所有していることとなり、全世帯数の約5億世帯のうちの15%ほどがペットを飼育している計算になります。

一方でアメリカでは70%の世帯でペットを所有しており、中国の低いペット所有率を考えると、いまだ多くのポンシャルを秘め、今後さらに拡大すると考えられています。まずは日本などのペット先進国のようにペットフードやケア製品、トリミング、ペットホテルなどの充実から始まり、そしてここでも中国お得意のデジタルやIT技術を応用したペットテック商品の販売は少しずつ増加しています。

日本で購入可能なペットテック製品も中国製の安価な商品が多く、さまざまな新規参入企業がペットテック商品がアマゾンなどのプラットフォームを通じて、世界中に販売されています。

中国の巨大IT企業であり、マーケットサイトも所有する「阿里巴巴」(アリババ)などの参入や、アンドロイド・スマートフォン製造で有名な、シャオミもネスレの傘下のブランド「Pawbby」と提携し、アプリを使用した自動給餌システム「Pawbby Care」やペット用ネイルケアデバイスを発売しています。

これらの企業のように中国では他にもさまざま新商品が開発され、さらに新規参入してくる企業も多数存在します。これからのペットテック市場のさらなる活性化が予測されています。

まとめ

このように日本をはじめ世界ではさまざまなペットテック技術が使用されています。飼い主が常に一緒にいることができない環境で心配な場面や、飼い主だけで行うには難しい専門的な健康管理などを、主にIoTの技術により行いやすくしてくれる商品が多数存在しています。価格もそれほど高額なものではなく、利用者にも求めやすい価格となっていることも、ペットテック用品の普及に一役買っています。

新型コロナウイルスで在宅時間が増える中、できる限り愛するペットと同じ時間を過ごし、ペットテックを合わせて使用することによって少しでもペットには健康で長生きしてもらいたいですよね。

ペット市場増加率
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2649

犬猫飼育頭数
https://petfood.or.jp/topics/img/201223.pdf

Furbo
https://shopjp.furbo.com/?a8=o5a7254SMXg7s3atbWgta3AtCSuYTy6IwWgs43RLZslSMXa5TXABgtTJgXQw_wAgKskt8PaBK5a7ds00000017737001

CATLINK
https://www.catlinks.cn/#

アメリカペットテック
https://www.globenewswire.com/news-release/2021/05/20/2233046/0/en/Global-Pet-Tech-Market-revenue-to-hit-20-Bn-by-2027-Global-Market-Insights-Inc.html

Felik
https://www.indiegogo.com/projects/felik-world-s-first-ai-powered-pet-toy#/

Dogdoor
https://www.hitecpet.com/petdoors.html

Rover
https://www.rover.com

China Pet Population
https://www.chinapetmarket.com/china-pet-population-and-ownership-2019/

China pet rate per household
https://www.globenewswire.com/en/news-release/2021/02/09/2171978/0/en/The-Chinese-pet-food-market-is-projected-to-register-a-CAGR-of-3-8-during-the-forecast-period-2021-2026.html#:~:text=According%20to%20the%20State%20Council,account%20for%2020%25%20in%202019.

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