
グレンコアは、スイスに本社を置く世界最大級のコモディティ取引企業です。世界30カ国以上に拠点を持ち、金属・鉱石関連、エネルギー関連の60以上の商品を販売しています。本記事ではグレンコアの会社概要や経営状況、ビジネスモデルを紹介します。
グレンコアとはどんな会社

出典:グレンコア
グレンコアは鉄や非鉄金属、鉱物、原油、石油製品を世界的に販売している企業です。この章では、同社の会社概要や歴史、経営理念を紹介します。
会社概要
グレンコアの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Glencore plc |
本社 | スイス |
設立 | 1974年 |
拠点数 | 30カ国以上に50カ所 |
従業員数 | 150,000人 |
売上高 | 2,178億ドル(2023年度) |
歴史
グレンコアの歴史は、1974年に相場師のマーク・リッチ氏がコモディティ取引会社マーク・リッチを設立したのが始まりです。同社は設立当初から鉄や非鉄、鉱物、原油を販売しており、1993年に社名をグレンコアに変更しました。また、同社は成長戦略として、積極的な買収によりポートフォリオの多様化を推進してきました。買収の一例は以下のとおりです。
1981年:オランダの穀物会社グラナリアを買収
1987年:アメリカの製鉄所とペルーの鉱山を買収
1995年:コロンビアのプロデコの石炭事業を買収
2012年:カナダの穀物流通大手のバイテラを買収
(2017年に穀物部門をグレンコア・アグリカルチャーとして分社化)
2018年:オーストラリアのヘイルクリーク鉄鉱山を買収
これらの買収による事業拡大により、同社は世界最大級の規模に成長しています。その証拠に、Statistaの「2024年 世界の大手鉱業会社の売上高ランキング」において、鉱業会社の売上高ランキングで世界1位を獲得しています。
経営理念
同社の企業目的は、「日常生活を向上させる商品を責任を持って提供すること」です。その実現のために、以下の6つの価値観を重要視しています。
- 安全性:安全に対して決して妥協しないこと
- 責任:責任を持って、商業的・社会的・環境的パフォーマンスの向上に努めること
- シンプルさ:シンプルで現実的な解決策を探すこと
- 誠実さ:正しいことを行う勇気を持つこと
- 素直さ:正直で素直なコミュニケーションを行うこと
- 起業家精神:新しいアイデアを推奨し、変化に素早く対応すること
グレンコアの経営状況
グレンコアの経営状況として、直近6年間の売上高・EBITの推移を紹介します。※EBITとは、金利税引前利益のことです。

参考:グレンコア「Publications archive」
2023年度の売上高は2,178億ドル(32兆6,700億円)で、2022年度の2,560億ドル(38兆4,000億円)と比較して、382億ドル(5兆7,300億円)減少しました。また、2023年度のEBITは104億ドル(1兆5,600億円)で、2022年度の267億ドル(4兆50億円)と比較して、163億ドル(2兆4,450億円)減少しました。売上高とEBITが減少した要因として、天然ガスや石油の価格下落が挙げられます。※1ドル=150円換算
同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:グレンコア「Publications archive」
グラフからグレンコアの主要地域は、アジア・ヨーロッパ・南北アメリカと言えます。
グレンコアの事業別売上高の推移
グレンコアの経営状況について、事業別の売上高に焦点を当てて解説します。事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:グレンコア「Publications archive」
この章では各事業の売上高とEBITの推移を紹介します。
マーケティング活動
マーケティング活動事業は、金属・鉱物やエネルギー製品の流通と販売を担う事業です。同事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

参考:グレンコア「Publications archive」
2023年度の売上高は1,867億ドル(28兆50億円)で、2022年度の2,151億ドル(32兆2,650億円)と比較して、284億ドル(4兆2,600億円)減少しました。また、2023年度のEBITは35億ドル(5,250億円)で、2022年度の69億ドル(1兆350億円)と比較して、34億ドル(5,100億円)減少しました。
売上高とEBITが減少した要因として、コバルトやニッケル、リチウムなどの電池業界向け金属の生産コストの上昇に加えて、過剰供給により天然ガスと石炭の価格下落が挙げられます。
産業活動
産業活動事業は、金属・鉱物やエネルギーの製品の生産に関する事業です。探鉱や採掘、加工、精製などが含まれます。同事業の売上高とEBITは以下のとおりです。

参考:グレンコア「Publications archive」
2023年度の売上高は579億ドル(8兆6,850億円)で、2022年度の756億ドル(11兆3,400億円)と比較して、177億ドル(2兆6,550億円)減少しました。2023年度のEBITは69億ドル(1兆350億円)で、2022年度の203億ドル(3兆450億円)と比較して、134億ドル(2兆100億円)減少しました。
売上高とEBITが減少した要因として、石炭の大幅な価格の下落が挙げられます。また2023年度の設備投資額が60億7,400万ドル(9,111億円)で、2022年度の48億700万ドル(7,210億円)と比較して、12億6,700万ドル(1,900億円)増加したことも要因の一つです。
グレンコアのビジネスモデル
グレンコアは金属・鉱石、エネルギー関連の製品を取り扱うコモディティ取引企業です。ただし、単に流通と販売を行うだけではありません。同社のビジネスモデルのイメージは以下のとおりです。

出典:グレンコア
同社のビジネスモデルは以下の4つの活動で構成されており、これらの活動で資源を循環させることで低炭素社会の実現を目指しています。
- マーケティング活動(Marketing business)
先の章で紹介したようにマーケティング活動は、金属・鉱物やエネルギー製品の流通と販売を担う事業です。同社が採掘した製品だけではなく、アルミニウムや鉄鉱石などにおいては他社製品の販売も行っています。
- 産業活動(Industrial business)
オーストラリア・アフリカ・カナダ・南米での石炭の採掘に加えて、原油や精製品、天然ガスなどの生産を担う事業です。
- リサイクル(Recycling)
同社のリサイクル事業では、世界30カ国以上から様々な材料を回収し、幅広い顧客にリサイクル製品を提供しています。具体的には銅やニッケル、コバルト、亜鉛などの重要な金属を使用済み電子機器からリサイクルしています。
- 炭素ソリューション(Carbon solutions)
炭素ソリューションはエネルギー利用の脱炭素化を支援し、温室効果ガスを削減する技術のことです。
まとめ
グレンコアは、世界最大級のコモディティ取引企業です。銅・コバルト・亜鉛・ニッケル・アルミニウム・石炭・原油など、金属・鉱物やエネルギー関連の60種類以上の製品を取り扱っています。同社は歴史から買収により事業拡大に成功した企業と言えます。事業拡大や海外進出に悩んでいる経営者様は、同社の事業展開の仕方を参考にしてみてはいかがでしょうか。