M&Aで成功した企業5選|海外M&Aのメリットやポイントを解説

海外進出で成功するには、「現地の人材の確保」「法規制への対応」「ブランディング」など、多くの課題を乗り越える必要があります。時間も手間もかかるため、一歩踏み出すことを躊躇している方もいらっしゃるでしょう。

しかし、これらの課題を短期間で解決し、成功に近づける戦略があります。それはM&Aです。本記事では、成功事例としてM&Aで成長を遂げた企業5選を紹介します。

M&Aが海外進出に有効な理由

M&Aとは、企業の買収や合併のことです。市場シェアや事業の拡大、新規市場への進出などを目的に行われます。ここでは、M&Aが海外進出に有効な理由として、4つのメリットを紹介します。

現地のノウハウ・人材を取り込める

M&Aは、組織そのものを買収するため、現地のノウハウや優秀な人材を同時に獲得できる点がメリットです。海外進出では、現地特有の商習慣への対応や人材確保が課題になりがちです。また、ゼロから事業を立ち上げる場合、人材育成にも手間やコストがかかります。M&Aによって既存の企業を活用することで、こうした海外進出の課題を短期間で解決できます。

現地の顧客やブランドを獲得できる

新規参入の企業が認知度を高め、ブランドの信頼を築くのは容易ではありません。海外市場では、難易度がさらに上がります。そこで、有効なのがM&Aです。既存の企業を買収することで、すでに市場で認知されているブランドやサービス、顧客をそのまま引き継ぐことができます。これにより、市場参入直後から一定の売上と収益を見込めるため、新規事業立ち上げに伴うリスクを軽減できます。

事業立ち上げの期間や手間を削減できる

海外での新規法人の設立や工場の建設、販売網の構築には、複雑な手続きや調整を伴います。場合によっては、事業を開始するまでに数年を要することもあります。その点、M&Aを活用すれば、既存の設備や事業基盤を引き継ぐことができるため、新規の立ち上げに比べて準備期間を大幅に短縮できるのがメリットです。スピーディな事業展開は、機会損失のリスクを最小限に抑え、競争優位性の確保に役立ちます。

リスク分散につながる

国内市場に依存している企業は、景気や法規制の変化によって、経営に大きな影響を受けるリスクがあります。M&Aを通じて海外進出を推進することで、収益源の多様化につながり、経営上のリスクを分散できます。

M&Aで成長した企業5選

ここからは、M&Aでグローバルな成長を遂げた大手企業5社を紹介します。各企業の戦略や成果を参考にすることで、M&A戦略のヒントを得られるでしょう。

ネスレ

ネスレ(Nestle)は、「ネスカフェ」や「キットカット」などのブランドで知られる世界最大級の食品飲料企業です。スイスに本社を置き、2024年度の売上高は914億スイスフラン(15兆7,208億円)でした。※1スイスフラン=172円換算

1866年にベビーフードの開発から事業をスタートし、現在では2,000以上のブランドを185カ国で展開するグローバル企業に成長しています。これほど巨大な企業に成長した背景には、創業当初からの積極的なM&A戦略が挙げられます。

例えば、製薬大手ファイザーの幼児栄養食部門や、栄養補助食品大手「ザ・バウンティフル・カンパニー」の主要ブランドの買収などです。

ネスレのM&A戦略の特徴は、積極的な買収に加え、不採算事業の売却による事業ポートフォリオの最適化です。これにより、持続的な成長を実現しています。

ネスレの詳細は、「Nestle(ネスレ)とはどんな会社?会社概要や経営状況を解説」の記事をご参照ください。

武田薬品工業

武田薬品工業は、240年以上の歴史を持つ国内有数の製薬企業です。2024年度の売上高は4兆5,798億円で、海外売上比率が90%を超えています。

この成長を支えているのは、ニッチ市場の開拓と戦略的な海外M&Aです。特に大きな影響を与えた買収は、2019年のアイルランドの製薬大手シャイアーでした。この買収により、同社は急激に規模を拡大し、世界の製薬企業ランキングでトップ10に入るまでに成長しました。

武田薬品工業の詳細は、「武田薬品工業のM&A戦略。脱日本・グローバル多国籍企業へ」の記事をご参照ください。

ユニリーバ

ユニリーバ(Unilever)は、イギリスに本社を置く世界有数の消費財メーカーです。190カ国で製品を展開しており、毎日同社製品を34億人が利用しています。日本では「LUX(ラックス)」「Dove(ダヴ)」「AXE(アックス)」などのブランドで知られています。2024年度の売上高は、608億ユーロ(9兆7,280億円)に達しました。※1ユーロ=160円換算

同社の成長を支えているのは、積極的なM&A戦略です。それを象徴する出来事は、1930年代の大恐慌や第二次世界大戦といった厳しい時期にも、買収を通じて事業拡大を続けたことです。

現在もその姿勢は変わらず、M&Aにより事業を拡大しています。一方で、マーガリン事業などの不採算事業を売却しているのもポイントです。事業ポートフォリオを見直しながら、成長性の高いブランドや市場への投資に注力しているのが同社のM&A戦略と言えます。

ユニリーバの詳細は、「ユニリーバ(Unilever)とはどんな会社?会社概要や業績を解説」の記事をご参照ください。

ペプシコ

ペプシコ(PepsiCo)は、アメリカに本社を置く食品飲料メーカーです。「ペプシコーラ」の飲料と「チートス」や「ドリトス」などのスナック菓子で知られています。200カ国以上で事業を展開しており、2024年度の売上高は918億ドル(13兆7,700億円)でした。※1ドル=150円換算

同社は1986年以降、M&Aを続けることで、持続的な成長を実現してきました。その戦略は現在も続いており、2025年には、機能性ソーダブランド「Poppi」を19.5億ドルで買収しています。

ペプシコの詳細は、「ペプシコ(PepsiCo, Inc.)の会社概要や経営状況を解説」の記事をご参照ください。

ABB

ABBは、スイスに本社を置く産業用ロボットメーカーです。100カ国以上で事業を展開しており、2024年度の売上高は328億ドル(4兆9,200億円)でした。※1ドル=150円換算

同社は、M&Aによって競争力を高めてきた企業として知られています。近年も積極的に買収を続けており、2024年も7月までに6件のM&Aを実施するなど、事業拡大を加速させています。

ABBの詳細は、「世界4大産業用ロボットメーカーのABBはどんな会社?事業内容・業績」の記事をご参照ください。

海外M&Aで成功するためのポイント

M&Aは、短期間で海外進出を実現するのに有効な手段です。しかし、適切な準備や戦略がなければ、思わぬ失敗につながるリスクもあります。ここでは、海外M&Aを成功に導くための3つのポイントを紹介します。

ポイント① 目的を明確にする

まず重要なのは、M&Aの目的を明確にすることです。目的によって、買収すべき企業や戦略が異なるためです。例えば、次のような目的が考えられます。

  • 技術の獲得
  • 優秀な人材の確保
  • 開発力・生産力の強化
  • 市場シェアの拡大

このように目的を具体化することで、適切な企業を選定でき、M&A後の経営戦略をイメージしやすくなります。

ポイント② シナジー効果を考慮する

M&Aで効果的に事業規模を拡大するには、既存事業とのシナジー効果を検討することが大切です。例えば、自社が優れた生産技術を持つ製造業であれば、買収先にはグローバルな販売ネットワークを持つ企業を選ぶなどです。このように、シナジー効果を考慮したM&Aを行うことで、組織全体の成長を促進できます。

ポイント③ デューデリジェンスでリスクを把握する

海外M&Aでは、買収前にターゲット企業のリスクを多方面から分析することが重要です。そのために行われる調査が「デューデリジェンス」です。

ターゲット企業の実態を正確に把握することで、過大評価や買収後のトラブルを防止できます。特に海外M&Aでは、現地の法規制や労働慣行、文化の違いによるリスクも多いため、専門家の支援を受けながら慎重に進めることが大切です。

M&Aで海外進出を実現しよう

成功している大手企業の多くは、M&Aで事業を拡大しています。特に海外進出においてM&Aは、立ち上げにかかる時間や手間を削減できるなど、多くのメリットがあります。海外進出を検討している経営者様は、選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

ただし、海外M&Aにはリスクも伴うため、慎重な計画と入念な準備が不可欠です。

プルーヴでは、海外M&Aにおける企業の選定やデューデリジェンスなど、海外進出に必要な支援を幅広く提供しています。海外進出に関心のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

関連する事例

海外進出および展開はどのように取り組めば良い?
とお悩みの担当者様へ

海外進出および展開を検討する際に、
①どんな情報からまず集めればよいか分からない。
②どんな観点で進出検討国の現場を見ればよいか分からない。
③海外進出後の決定を分ける、「細かな要素」は何かを知りたい。

このような悩みをお持ちの方々に、プロジェクト時には必ず現地視察を行う、弊社PROVE社員が現地訪問した際に、どんな観点で海外現地を視察しているのかをお伝えさせていただきます。