
ミラーノルは、インテリア家具ブランドを複数展開するアメリカの企業です。代表的なブランドに「ハーマンミラー(Herman Miller)」や「ノル(Knoll)」があります。本記事では、ミラーノルの会社概要と経営状況を解説します。
ミラーノルとはどんな会社

出典:ミラーノル
ミラーノルは、オフィス家具やオフィス設備を手掛けていたハーマンミラーを前身とする企業です。ハーマンミラーがモダン家具ブランドのノルを買収した際に、社名を変更して誕生しました。この章ではミラーノルの会社概要や経営理念、さらにハーマンミラーの歴史を紹介します。
会社概要
ミラーノルの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | MillerKnoll, Inc. |
本社 | アメリカ |
設立 | 1905年 |
店舗数 | 75店舗(2024年6月1日時点) |
進出エリア | 北アメリカ/ヨーロッパ/ アジア太平洋地域/ラテンアメリカ |
従業員数 | 10,200人(2024年6月1日時点) |
売上高 | 18億ドル(2024年度) |
経営理念
ミラーノルは経営理念として、存在理由に「人々の幸せのためのデザイン」を掲げています。
同社はその目的意識として、「私たちは、社員の持つ力を信じ、世界中でお客様や地域社会のために社員が一緒になって起こせる影響を重視しています。道を切り開く方法、お互いに対する理解、そして働き方を通して、私たちの目的を実行していきます。」と定義しています。
そして、その実現のために重視している価値観は以下の3つです。
- 私たちは変化をもたらす仕事をしています
- 私たちは皆、特別な存在です
- 力を合わせて、より良い成果を
これらのミラーノルの経営理念には、デザインの力で人々の生活をより良いものにするという願いが込められています。
引用:ミラーノル「目的と価値観」
ハーマンミラーの歴史
ハーマンミラーは1905年、アメリカのミシガン州でベッドルーム家具製造会社「Star Furniture Company」として創業しました。1923年に社名を「Herman Miller Furniture Company」に変更し、ハーマンミラーの名がつけられました。
その後、革新的なアイデアで商品を開発。1942年にはオフィス家具市場に進出し、システムファニチャーの先駆けとなりました。また、1967年には一体型完全プラスチックチェアを発表し、画期的な製品として注目を集めました。
1990年代以降、ハーマンミラーは多くの企業を買収します。その一例は以下のとおりです。
1994年:メキシコのRighettiを買収
2008年:ヘルスケアファニチャー製造企業のBrandrud Furniture, Inc.を買収
2009年:同じくヘルスケアファニチャー製造企業のNemschoff, Inc.を買収
2012年:オフィス家具メーカーのPOSHを買収
2021年:Knoll, Inc.を買収しミラーノルが誕生
このようにハーマンミラーはデザイン性や機能性を追求した家具を開発するとともに、積極的な買収により事業を拡大してきました。
ミラーノルの経営状況
ミラーノルの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:ミラーノル「Annual Report」
2024年度の売上高は36億ドル(5,400億円)で、2023年度の41億ドル(6,150億円)と比較して、5億ドル(750億円)減少しました。一方、2024年度の営業利益は1億7,000万ドル(255億円)で、2023年度の1億2,000万ドル(180億円)と比較して、5,000万ドル(75億円)増加しました。売上高が減少した要因は、すべての事業で販売量が減少したことに加えて、北アメリカのEコマースの閉鎖が挙げられます。一方、営業利益が増加した要因は、コストの最適化による変動販売費の抑制が挙げられます。※1ドル=150円換算
また、同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:ミラーノル「Annual Report」
グラフから、ミラーノルはアメリカ国内の売上高の割合が多いことがわかります。
ミラーノルの事業別売上高の推移
ミラーノルの経営状況について、事業別売上高に焦点を当てて解説します。同社の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:ミラーノル「Annual Report」
米州契約が最も売上高の割合が高く、国際契約スペシャリティーとグローバルリテールの売上高は同程度です。この章では、各事業の内容に加えて、売上高と営業利益の推移を紹介します。
米州契約
米州契約事業は、米州全域におけるオフィス・医療・教育環境向けの家具製品の設計・製造・販売を担う事業です。同事業の売上高と営業利益は以下のとおりです。

参考:ミラーノル「Annual Report」
2024年度の売上高は18億ドル(2,700億円)で、2023年度の20億ドル(3,000億円)と比較して、2億ドル(300億円)減少しました。一方、2024年度の営業利益は1億ドル(150億円)で、2023年度と同水準を維持しました。売上高が減少した要因は、2023年度初めにパンデミックからの反動で一時的に需要が増えたことが挙げられます。なぜなら、一時的な需要増により2023年度の売上高が増え、さらにその反動で2024年度の売上高が減少したと考えられるからです。
国際契約スペシャリティー
国際契約スペシャリティー事業は、ヨーロッパ・中東・アフリカ・アジア太平洋地域における家具製品の設計・製造・販売を担う事業です。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:ミラーノル「Annual Report」
2024年度の売上高は9億3,000万ドル(1,395億円)で、2023年度の10億2,000万ドル(1,530億円)と比較して、9,000万ドル(135億円)減少しました。また、2024年度の営業利益は8,000万ドル(120億円)で、2023年度の1億ドル(150億円)と比較して、2,000万ドル(30億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因は、ヨーロッパとアジア太平洋地域の一部で売上が減少したことが挙げられます。
グローバルリテール
グローバルリテール事業は、モダンなデザインの家具やアクセサリーの小売業者への販売、及び消費者への直接販売に関連するオペレーションを担う事業です。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:ミラーノル「Annual Report」
2024年度の売上高は8億7,000万ドル(1,305億円)で、2023年度の10億4,000万ドル(1,560億円)と比較して、1億7,000万ドル(255億円)減少しました。一方、2024年度の営業利益は4,000万ドル(60億円)で、2023年度の2,000万ドル(30億円)の赤字と比較して、6,000万ドル(90億円)増加しました。売上高が減少した要因は、Eコマースの閉鎖や北アメリカ住宅市場の減速による販売量の減少が挙げられます。一方、営業利益が増加した要因は、コスト削減による粗利益率の改善が挙げられます。
ミラーノルは買収により発展した企業
ミラーノルは前身企業のハーマンミラーが2021年にノルを買収した際に、名前を変更して誕生した企業です。そのハーマンミラーは機能性とデザイン性に優れた製品の開発に加えて、1990年代以降、積極的な買収により事業を拡大してきました。事業展開の仕方で悩んでいる経営者様は、ミラーノル及びハーマンミラーの事業展開の仕方を参考にしてみてはいかがでしょうか。