株式会社豊田自動織機の会社概要と業績、成長戦略を徹底解説

株式会社豊田自動織機(以降は「豊田自動織機」と言います。)は、フォークリフトを始め、繊維機械や自動車用部品などを製造しているメーカーです。世界で活躍するトヨタ自動車株式会社(以降は「トヨタ自動車」と言います。)の源流の企業としても知られています。本記事では豊田自動織機の会社概要や業績、成長戦略について紹介します。

豊田自動織機とはどんな会社?

出典:豊田自動織機

豊田自動織機は、フォークリフトやカーエアコン用コンプレッサー、エアジェット織機の3分野において世界シェア1位を誇る企業です。その中でもフォークリフトは、国内販売台数で58年連続1位を獲得しています。この章では、同社の会社概要・歴史・事業内容を紹介します。※エアジェット織機とは、よこ糸を空気の力で飛ばす織機のこと。

会社概要

豊田自動織機の会社概要は以下のとおりです。

会社名株式会社豊田自動織機
本社愛知県
設立1926年11月
従業員数77,824人(2024年3月31日時点)
主要海外関係会社数北米・中南米:22社 欧州:35社 アジア・オセアニア:15社
売上高3兆8,332億円(2023年度)

豊田自動織機は、トヨタグループのルーツの企業で、現在も同グループの一員です。トヨタグループはトヨタ自動車を中心に、17社で構成されています。また、豊田自動織機とトヨタ自動車は資本関係にありますが、親会社・子会社の関係ではありません。

歴史

1924年に創業者の豊田佐吉氏は自動織機を発明し、1926年にその自動織機を製造・販売するために豊田自動織機を設立しました。1933年に自動車部を設置し、1935年に大衆乗用車の試作車が完成します。1937年には自動車部を分離し、トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)を設立しました。

1946年、諸外国から輸入された援助物資の見返り輸出として織機を出荷します。これが戦後の日本で初めての機会の輸出となりました。

1956年にフォークリフトを発売し、1960年にカーエアコン用コンプレッサーの生産を開始します。

1988年以降は海外生産を本格化させ、2000年以降はBTインダストリーズやファンダランデ社、バスティアン社などをM&Aにより子会社化して事業領域を拡大しました。

事業内容

豊田自動織機の主要事業は産業車両、自動車、繊維機械の3事業です。それぞれの事業における主力製品は以下のとおりです。

・産業車両

フォークリフトや高所作業車を開発・販売しており、トヨタ・レイモンド・チェサブのブランドで世界中に展開しています。

・自動車

トヨタ車の車両組立を始め、エンジンやカーエアコン用コンプレッサー、カーエレクトロニクスといった自動車関連製品の開発・生産を行っています。

・繊維機械

創業以来の事業である繊維機械事業の主力製品はエアジェット織機です。

豊田自動織機の経営状況

豊田自動織機の経営状況として、直近6年間の売上高・営業利益の推移を紹介します。

参考:豊田自動織機「業績ハイライト <国際会計基準(IFRS)>

2023年度の売上高は3兆8,332億円、営業利益は2,004億円でした。売上高と営業利益のどちらも過去最高を更新しています。2021年度以降、売上高は急激に拡大しているのも特徴です。2023年度の好調の要因は、自動車事業の販売台数の増加や円安の影響が挙げられます。

また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

出典:豊田自動織機「IR 最新決算資料

北米・日本・欧州で全体の84.8%を占めており、欧米と日本が同社の主要な進出先と言えます。なお、2023年度の同社の海外売上比率は76%でした。

豊田自動織機の事業別売上高の推移

豊田自動織機の業績を深掘りするために、ここでは事業別の売上高に焦点を当てます。まずは、事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

出典:豊田自動織機「IR 最新決算資料

豊田自動織機は、もともと自動織機の開発・製造が主力事業でした。しかし、現在では産業車両事業と自動車事業が全体の96.1%を占めています。

産業車両

産業車両事業の売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:豊田自動織機「決算短信・決算説明会

産業車両の2023年度の売上高は2兆5,872億円で、前年度と比較すると3,034億円の増加でした。営業利益については1,656億円で、前年度よりも438億円の増加でした。売上高と営業利益のどちらも拡大しており、同社の成長を牽引している事業と言えます。

2023年度に売上高・営業利益を拡大できた要因は、フォークリフトの値上げと円安の影響が挙げられます。なお、産業車両の2023年度の販売台数は30.8万台で、前年度よりも0.9万台減少しました。

自動車

自動車事業の売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:豊田自動織機「決算短信・決算説明会

2023年度の売上高は1兆964億円で、前年度よりも1,386億円の増加でした。売上高が増加した要因は、以下の3つが挙げられます。

  • 海外向けのトヨタ車の販売台数が増加
  • ガソリンエンジンの需要が増加
  • 北米や欧州でカーエアコン用コンプレッサーの需要が増加

ただし、営業利益については182億円で前年度よりも減少しました。

繊維機械

繊維機械事業の売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:豊田自動織機「決算短信・決算説明会

2023年度の売上高は933億円で、3年連続で売上が拡大しています。同様に営業利益も80億円で前年度よりも2億円の増加でした。好調を維持している要因は、織機や紡機の需要の増加が挙げられます。

2020年度は営業利益が赤字に陥っていることから、V字回復を果たした事業と言えるでしょう。

豊田自動織機の成長戦略

豊田自動織機は中期経営戦略として、「2030年ビジョン」を掲げています。2030年ビジョンは創業精神である「豊田綱領」をもとに、創業以来の「繊維機械」を原点として「自動車」と「産業車両・物流」の事業により持続的な成長を目指す経営戦略です。

出典:豊田自動織機「豊田自動織機グループ「2030年ビジョン」を策定

具体的な目標は、2030年度の営業利益を4,000億円超、営業利益率を10%にすることです。

この2030年ビジョンの達成に向けた「新事業への挑戦」として、同社は貴金属フリーの水素製造装置用電極の開発に成功しました。この電極は、白金やコバルトといった貴金属を使わないため、サプライチェーンリスクの低減に貢献します。加えて、高い電解効率と高い耐久性が特徴です。

同社では水素製造装置の2030年の市場規模は、2022年比で約130倍に急拡大すると見込んでいます。

なお、「豊田綱領」は創業者の豊田佐吉氏の遺訓を1935年にまとめたもので、トヨタグループ全体の行動指針となっています。

・豊田綱領

一、 上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を拳ぐべし

一、 研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし

一、 華美を戒め、質実剛健たるべし

一、 温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし

一、 神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし

引用:豊田自動織機「企業理念

豊田自動織機は動向を注目すべき企業の1つ

豊田自動織機は、フォークリフト・カーエアコン用コンプレッサー・エアジェット織機で世界1位を獲得している企業です。中期経営戦略である「2030年ビジョン」の達成に向けて、今後は新規事業に対しても挑戦していくとのことです。市場の急拡大が予想される水素製造領域の製品の開発など、同社の今後の動向に注目しましょう。


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