コンビニの店員はほとんどが外国人という店舗も増加しています。一般的な光景となってきました。日本には少子高齢化にともなう人手不足の問題があり、今後幅広い業界や業種では職場や街でも外国人労働者を見掛ける機会がどんどん増えていくでしょう。
2018年に「改正入管難民法」を施行した政府は、今後の5年間で34万人の外国人労働者の受け入れたいとしています。しかし、受け入れ態勢が追い付いていないことが問題となっています。
外国人労働者が日本で就労するにはまだハードルが高く、住民票の取得や銀行口座の開設といった行政手続き、語学、ビジネスマナー、就職先探しなどの様々な課題があります。
10年前は、外国人が日本で部屋を借りるのはかなり困難なことでした。日本では賃貸住宅を借りる際に必要となる保証人ですが、これは日本特有の制度です。日本に来たばかりで保証人になってくれる知り合いなどいない外国人がほとんどで、「外国人の入居者はお断り」とする不動産業者がほとんどだったようです。
しかし、日本の状況は変わってきており、外国人を受け入れなければ経済が成り立たなくなっています。
外国人に対する規制をスピーディに緩和し、多くの外国人に就業してもらうような歩み寄りのサービスが必要となっており、実際に続々とサービスが生れています。
ここでは日本における外国人労働者の動向、支援ビジネスなどについてご紹介します。
日本の外国人労働者の背景
2018年に施行された「改正入管難民法」は、少子高齢化に伴う人手不足と高齢化の問題を解消に近づけるために、これまで認めてこなかった単純労働に門戸を開きます。
一定の技能を持つ外国人や、技能実習修了後の希望者に新たな就労資格を与えるというものです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38701380X01C18A2SHA000/
2018年2月1日現在の日本の総人口は1億2,660万人です。
ピーク時は2008年12月の1億2,810万人だったのですが、それから150万人も少なくなっており、2065年になると8,808万人まで減少すると予想されています。従って、産業界の外国人労働者への依存度も高くなっています。
日本全体の就労者に占める外国人労働者の割合は、2009年は1.03%、2019年には2.47%まで上昇しており、40.5人に1人が外国人労働者ということを意味しています。特にサービス業、宿泊業、飲食業では40%を超えており依存度が高く、そのペースも加速しているようです。
国籍別の労働者数
厚生労働省のデータによると、2019年10月末、外国人労働者数は約166万人と前年比+13.6%となり、過去最高記録となりました。比率は中国出身の労働者が最も多く約42万人。
次に多いのが約40万人のベトナム出身者です。
これは意外に感じるかもしれませんが、実際最近ではベトナムやネパールからの外国人労働者が、近年大幅に増加傾向となっています。
ベトナム人増加の背景
ベトナム人が2番目に多く増加傾向にあるというのは意外だったのではないでしょうか。なぜベトナム人が増加傾向になっているか、その背景を見てみましょう。
外国人を受け入れる制度に「外国人技能実習制度」というものがあります。開発途上国の人が来日し、企業で働きながら技能や技術・知識を身につけてもらいます。それを母国の経済発展に役立ててもらうという制度です。
実習生が働ける期間は最長5年間で、「国際協力の一環」という名目となっています。人手不足に悩む日本企業は労働力確保でき、職を求める外国人は雇用機会を得られるという双方のメリットがあります。
以前までは技能実習生として多かったのは中国人で、その割合は外国人労働者の大半を占めていました。
しかし、中国の急速な経済発展よって富裕層や中間所得層が増加し、中国人は日本へ稼ぎに来る必要がなくなってきたのです。日本企業はその欠員を埋めるために、ベトナム人技能実習生を積極的に受け入れ開始しているのです。
日本政府が2008年7月に発表した「留学生30万人計画」によって、学生ビザが緩和されてきました。ベトナムだけでなく多くの外国人留学生が来日し、それに伴って日本語教育機関や、留学生の受け入れ体制が整った専門学校、大学も増加していきました。
ベトナムからの留学生の割合も、約11万人の中国に次ぎ、約6万人のベトナムが2位となっています。
2012年のベトナム人留学生は6000人程度でしたが、この5年で約10倍に増えています。留学生の多くは留学をきっかけとしてそのまま日本企業に就業するパターンが多いため、ベトナム人の就業者数が、中国に次いで2位となっているのでしょう。
2019年には計画が達成され、31万人以上の留学生が日本で学びました。
アメリカやヨーロッパ諸国では留学生のアルバイトが年々厳しくなっており、禁止又は時間が制限されている動向も追い風になりました。
日本は資格外活動を申請すれば、留学生であったとしても週28時間、休暇中は40時間アルバイト就労が可能です。
日本に留学すれば学費と生活費の一部をアルバイトで得ることができるので、経済的に余裕があまりな留学生にとってメリットになりました。
コロナウイルスによる外国人労働者への影響
日本で働く外国人労働者は、出身者はベトナムやネパールなどが増加するなどして多様化し、2013年以降は7年連続で過去最高を更新してきました。
しかし、今回の新型コロナウイルス感染拡大によって、外国人労働者の需要が急減し、雇用環境が急激に悪化しています。コロナウイルスの拡大による外国人労働者への3つの主な影響は下記の通りです。
- 東京都で感染が悪化しており、都内に最も多く存在する外国人労働者が入国などの移動の制限を受けている
- 外国人が多く活躍している産業、宿泊業や飲食サービス業が主にダメージを受けている
- 外国人の雇用を受け入れる中小企業の危機への体制が脆弱。中小企業で就業する外国人労働者がセーフティネットの面での不安を高めていまる。支援対象に制限があることから、支援の手が届くのは一部に留まっている
外国人労働者は生活基盤を失って厳しい状況に置かれていますが、それに対して日本の外国人労働者に向けたセーフティネットが万全ではありません。このような状況に対して政府は支援策を打ち出しています。
- 実習の継続が困難となった技能実習生等に、特別措置として異業種への転職を認めました。最大1年「特定活動」の在留資格を与えるなどの措置を講じています。
- 1人あたり一律10万円給付される「特別定額給付金」、雇用維持のための休業措置を取った事業者に支給される「雇用調整助成金」などは、日本人労働者と同じく適用の対象となっている。
外国人労働者受け入れに向けた支援ビジネス
コロナウイルス感染拡大が発生する以前から、外国人労働者の受け入れを強化する施策として、支援ビジネスが続々と出てきています。それらのサービスをまとめてみました。
大手旅行会社
住民票などの行政手続き支援、医療機関の案内するサービス
日本貿易復興機構
在留資格認定証明書などの外国人向けの各種行政手続き、書類作成を代理で行うサービス
都内ベンチャー企業
銀行口座の開設手続き、就職先紹介や語学学習の支援サービス
日本ビジネス能力認定協会
外国人向けのビジネスマナー検定を実施
都内の不動産ベンチャー
空き家を社宅として提供する取り組み
企業向けの支援ビジネスの例
同時に、外国人労働者を雇用している/今後雇用したい企業向けの支援ビジネスも出てきています。
大手人材サービス会社
外国人労働者の採用支援、職場定着のための各種教育サポート
大手人材派遣会社
行政手続き、生活支援、人材育成、入社後の悩み相談までのトータルサポート
都内ITベンチャー企業
外国人労働者雇用時の入社手続き、各種書類管理を迅速化する電子システム
企業による支援ビジネスの事例
株式会社レオパレス21
都内に開設した「グローバルサポートセンター新宿」では、外国人の入居者様が抱える、住まいや生活に関する不安やトラブルの相談を母国語で対応してくれます。
セブン銀行、新生銀行、アプラス
今年2月、セブン銀行、新生銀行、アプラスは「クレド ファイナンス」を設立しました。
外国人の日本での生活に必要な資金を貸す与信サービスを開始しました。
もともとセブン銀行は、2011 年母国へ送金する「海外送金サービス」を提供していたのですが、年間の利用件数は114万件(2018年)に達したことから、この経験と実績を活かして新しいサービスを立ち上げました。
このセブン銀行の「海外送金サービスのノウハウ」と、アプラスの「個人向けローン審査の金融ノウハウ」を組み合わせた支援サービスです。永住権の有無、配偶者が日本人かどうかなどの条件を設けないのも利用のハードルを下げています。
資本金9億8000万円の内訳は、セブン銀行が60%、新生銀行が40%の出資となっています。
https://www.ncblibrary.com/posts/9714
東京スター銀行
日本で働く外国人に住宅ローンを提供。日本国籍か永住権を持たなくても融資の条件としています。英語、中国語を話せる行員を配置して相談に応じています。
レジスタ(東京都日本橋)
外国人技能実習生を対象とした不動産賃貸仲介サービスを提供。レジスタ独自のルートで知り得た外国人技能実習生の情報を活用し、実習生の方が入居できる物件をいち早くリサーチする。
空き家を活用する地方自治体(愛知県・岐阜県)
現在、空き家は全国的に増加しており、このことは社会問題になっています。「住宅・土地統計調査(総務省)」(平成30年)によると、全国の総住宅数 6242 万戸の内、空き家数は 846 万戸。空き家率は13.6%と過去最高記録を出しています。
この空き家問題を解消する手段として、住居探しに苦戦している外国人労働者に住んでもらえないか、という動きが出ています。今後、外国人労働者を積極的に受け入れる政府は、外国人の住居問題を解決していく必要がある中、この2つの課題を結びつける新たな支援ビジネスが出てきています。
愛知県高浜市の事例
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001345696.pdf
岐阜県飛騨市の事例
補助金制度「飛騨市外国人技能実習生の空き家等社宅化支援補助制度」を用意しています。
飛騨市で外国人技能実習生を雇用する企業を対象とし、空き家を外国人技能実習生用の社宅とする場合は、月々の賃貸料の3分の2(上限月3万円まで)を市が補助する。
また、空き家になった民家などを改修し、家電を備えつけて、外国人労働者向けの社宅として提供するといった取り組みもあるようです。
外国人を積極採用する企業
日本で外国人労働者を積極的に採用する企業にはどんな企業があるのでしょうか。
メルカリ
フリマアプリの「メルカリ」は、近年日本で最も外国人採用に力を入れていると言われています。2018年は、新卒エンジニアの9割が外国人の割合となりました。
メルカリの山田会長自らが「日本語が話せなくても英語ができればどんどん雇いたい」とグローバル化を推進する採用方針を述べています。
楽天
大手IT企業の「楽天」は、2012年に英語を社内公用語にしたことで話題になった企業です。約10年の歩みを経て、楽天は豊かなグローバル人材を事業に活かす企業へと成長しました。
パナソニック
世界的な電機メーカーである「パナソニック」は、2011年には新卒採用の8割である1100人の外国人を採用した実績を持っています。2016年、外国人採用に特化した「グローバル人事」を設置。世界規模での採用を積極的に行っています。
銀行が外国人を積極採用
北海道銀行は、外国人の登用を本格化させています。
その背景には、銀行の低金利環境や企業の減少です。地域経済に根ざすだけでは銀行に将来はないと危機感を募らせています。
北海道労働局によると、北海道内で就業する外国人は、19年10月末時点で約2万4千人ですが、「金融業・保険業」は全体の1%未満。
北洋銀行は、出資する地域商社や北海道総合商事がロシア関連のビジネスに強いことに着目し、ロシア人を起用し始めています。地元企業の海外展開支援などの専門人材に育て、新たな収益分野を拡大していきたいとの考えです。
最後に
人口減少は進んでいますが、外国人労働者を受け入れを迫られる日本に新たなビジネスチャンスが生まれています。
これから政府が積極的に受け入れを強化する中で規制も緩和されることが見込まれるため、多くの業界や業種、地方自治体にとって参入のチャンスが出てくるでしょう。
https://visa-supportcenter.com/jinzai-ichiran#toc1
https://global-saponet.mgl.mynavi.jp/culture/791
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64709&pno=2&more=1?site=nli#anka1
https://president.jp/articles/-/25669?page=1
https://mainichi.jp/articles/20180505/k00/00m/020/010000c
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/170367
http://think.leopalace21.co.jp/article/20190725g.html
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38701380X01C18A2SHA000/
https://shirofune.jellyfish-g.co.jp/others/hr_agent